「宗教」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?
日本では日常生活の中で宗教を強く意識することは少ないかもしれません。
しかし、世界には、宗教が生き方の軸となっている人々がたくさんいます。
この記事では、世界三大宗教であるキリスト教・イスラム教・仏教を中心に、主要な宗教とその思想をわかりやすく解説します。
- 世界三大宗教の思想
- 宗教の分類
- 宗教と哲学の関係
宗教を知ることは「他者を理解する」第一歩
宗教は、人々の価値観に深く根ざしています。
たとえば、善悪の判断基準、人生の意味、死後の世界の捉え方は人によって異なりますが、それらの背景には宗教的な思想が深く根付いていることがあります。
つまり、宗教を知ることは、他者を理解する第一歩であるといえます。
そして、他者を理解することによって、自分自身の価値観を改めて問い直すことにもつながるかもしれません。
世界三大宗教
世界三大宗教とは、キリスト教・イスラム教・仏教の3つの宗教をいいます。
宗教 | 信者数 | 主な地域 |
---|---|---|
キリスト教 | 約24億人 | ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ |
イスラム教 | 約20億人 | 中東、北アフリカ、南アジア |
仏教 | 約5億人 | 東南アジア、東アジア |
キリスト教
- 開祖:イエス・キリスト
- 聖典:聖書(旧約聖書・新約聖書)
- 神の存在:唯一神(創造主)
キリスト教では、神がこの世界を創り、人間を愛している存在だと考えます。
キリスト教徒は教会に通い、お祈りをし、聖書を読み、イエスの教えに従って生きることを重視しています。
キリスト教は大きく「カトリック」「プロテスタント」「東方正教会」の3つの宗派に分かれますが、イエスの存在を中心に置く点は共通しています。
贖罪(しょくざい)
贖罪とは、罪をつぐなうことです。
キリスト教では、人類の始祖であるアダムとイヴが犯した罪が、すべての人間に「原罪」という形で受け継がれていると考えられています。
しかし、神の子であるイエス・キリストが人類の罪を背負って十字架で死ぬことにより、原罪がつぐなわれたとされます。
キリスト教徒は信仰によってイエスの贖罪の恩恵を受けることができ、自身の原罪が赦されるのだと考えています。
隣人愛
隣人愛とは、自分の周囲の人々を自分のように愛することをいいます。
たとえ相手が知らない人や敵であっても、思いやりの心をもって接することが求められます。
実際に、キリスト教の教会では、貧しい人に食べ物を配ったり、困っている人を助けたりすることで「隣人愛」を実践しています。
イスラム教
- 開祖:ムハンマド
- 聖典:クルアーン
- 神の存在:唯一神(アッラー)
イスラム教は、「アッラーの導きに従って、誠実に生きること」を重視する宗教です。
神(アッラー)は全知全能の唯一神であり、人間はそのしもべとして、謙虚に従うことが求められます。
五行(ごぎょう)
五行とは、イスラム教徒が実行すべき5つの義務をいいます。
- 信仰告白(シャハーダ):アッラーの他に神はなく、ムハンマドはその使徒であると宣言する
- 礼拝(サラート):1日5回、メッカの方向に向かって祈る
- 喜捨(ザカート):貧しい人に施しをする
- 断食(サウム):ラマダン月の間、日の出から日没まで断食する
- 巡礼(ハッジ):一生に一度、メッカへの巡礼を行う
仏教
- 開祖:ゴータマ・シッダールタ(釈迦)
- 聖典:経典(パーリ語経典など)
- 神の存在:神を信じることが中心ではなく、自らの悟りを重視する宗教
仏教は、「人生は苦しみに満ちている」という気づきから出発し、その苦しみをどうすれば乗り越えられるのかを考え、実践していく宗教です。
仏教の開祖である釈迦は、王子として裕福な生活をしていましたが、老いと向き合う中で人生の無常さに目覚め、出家して真理を求めました。
そして、悟り(さとり)を開いた後、その教えを人々に広めていきました。
仏教では、特定の神に祈るのではなく、自分自身の心のあり方を整え、欲望や執着を手放すことによって安らぎに至ることを目指します。
その他の宗教
世界には三大宗教以外にも、地域的に強い影響を持つ宗教が数多くあります。
宗教 | 信者数 | 主な地域 | 概要 |
---|---|---|---|
ヒンドゥー教 | 約12億人 | インド、ネパール | 多神教で、輪廻転生・カルマの思想を持つ |
ユダヤ教 | 約1,500万人 | イスラエル、アメリカ | キリスト教やイスラム教の源流。神との契約を重視 |
神道 | 非公表(文化的信仰) | 日本 | 八百万の神を信じる自然信仰。祭りや神社が特徴 |
シク教 | 約3,000万人 | インド | 一神教。平等と労働、奉仕を重視 |
宗教を分類する方法
宗教は色々な観点で分類することができます。
ここでは、神との関係、生活との関わり方、人生の目的という3つの観点からの分類を紹介します。
神との関係で分類
分類 | 内容 | 宗教の例 |
---|---|---|
信じる | 絶対的な神さまを信じ、その教えに従うことで救われると考える | キリスト教、イスラム教、ユダヤ教 |
自分で目指す | 神を信じるのではなく、自分自身の行いにより人生を良くしていこうと考える | 仏教 |
自然とつながる | 山や川など自然に宿る神々とともに生きる | ヒンドゥー教、神道 |
生活との関わり方で分類
分類 | 内容 | 宗教の例 |
---|---|---|
毎日の行動が中心 | 食事・服装・休日などに決まりが多く、生活と信仰が一体となっている | イスラム教、ユダヤ教 |
行事が中心 | 特別な日や場所で神様に感謝をするが、日常生活では自由な面が多い | ヒンドゥー教、神道 |
修行が中心 | 日々の修行を通して、自分を鍛えることを重視する | 仏教 |
人生の目的で分類
分類 | 内容 | 宗教の例 |
---|---|---|
死後に救われることが目的 | 天国や極楽など、来世で救われることを目指す | キリスト教、イスラム教、仏教(一部) |
今の人生をよく生きることが目的 | 現在生きている世界をどう生きるかに焦点を当てる | 神道、仏教(一部) |
輪廻から抜けることが目的 | 生まれ変わりを繰り返す苦しみから解放されることを目指す | ヒンドゥー教、仏教 |
宗教と哲学の関係
宗教と哲学の共通項は、「人はなぜ生きるのか」「死んだらどうなるのか」「善悪とは何か」といった、人生や人間そのものについて問いを持つことです。
その問いに対して、宗教では「信仰」、哲学では「思考」を重視して解決しようとしているといえます。
主要な宗教を学ぶためのおすすめ入門書
まとめ
この記事では、世界三大宗教であるキリスト教・イスラム教・仏教の特徴や考え方をわかりやすく解説しました。
哲学のテーマの一つに「自己と他者」という問題があります。
自分とは異なる宗教について少しでも知識を得ることで、他者の理解を深められるのではないかと思います。