「囚人のジレンマ」とは、カナダの数学者アルバート・タッカー(1905 - 1995)が考案した思考実験です。ちなみに「ジレンマ(diremma)」とは、「2つの選択肢の間で板挟みになってしまうこと」という意味です。
この記事では、「囚人のジレンマ」について、具体例を用いて分かりやすく解説します。また、「囚人のジレンマ」の思考実験から、現代に生きる私たちが学べることを紹介します。
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「囚人のジレンマ」とは?
ある収容所に、AとBという二人の囚人がいます。
彼らはある犯罪の容疑で拘束されていますが、どちらも容疑を否認しています。
AとBはそれぞれ別室で、検察官による取り調べを受けています。
検察官はAとBに対して、次のような条件を出しました。
- 二人とも「黙秘」した場合は、二人とも2年の懲役を受ける
- 二人とも「自白」した場合は、二人とも5年の懲役を受ける
- 一方が「自白」し、もう一方が「黙秘」した場合は、自白した者は釈放され、黙秘した者は30年の懲役を受ける
さて、あなたがAやBの立場なら、自白するでしょうか。
それとも、黙秘するでしょうか。
「囚人のジレンマ」の結論
「囚人のジレンマ」の結論は「AもBも自白してしまい、どちらも懲役5年となる」というものです。
しかし、二人にとってベストな結果は「AもBも黙秘し、どちらも懲役2年となる」のはずです。
なぜ、そのような結果にならないのでしょうか。
改めて、AとBが置かれた状況を整理してみましょう。
|
Bが自白 | Bが黙秘 |
---|---|---|
Aが自白 | A:懲役5年 B:懲役5年 |
A:釈放 B:懲役30年 |
Aが黙秘 | A:懲役30年 B:釈放 |
A:懲役2年 B:懲役2年 |
ここからはAの立場で考えてみます。
まず、当たり前ですが「懲役30年」は何としても避けたいです。したがって、「黙秘」の選択はリスクが高すぎます。なぜなら、自分が「黙秘」でBが「自白」なら、自分は懲役30年になってしまうからです。
では、Bが「黙秘」してくれる可能性はあるでしょうか。ここが重要なポイントなのですが、Bにとっても「黙秘」の選択はリスクが高すぎて選べないはずです。
Bの「黙秘」が期待できないとなると、自分が「黙秘」を選ぶとほぼ確実に懲役30年になってしまうことになります。そのため、「自白」を選ぶしかないのです。
これらのことを、Bも全く同じように考えます。その結果、AもBも「黙秘」を選ぶことができず、結局どちらも「自白」を選ぶことになります。
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「囚人のジレンマ」の具体例
「囚人のジレンマ」のような状況は、私たちの日常生活でもしばしば起きています。
例えば、仲良くなった友達に自分の悩みを打ち明けるべきかどうか迷うことがあります。
あなたが悩みを打ち明けた場合、友達の反応は以下の2パターンが考えられます。
- 友達も悩みを打ち明けてくれ、二人の信頼がより深まる
- 友達から「重いな…」と思われてしまい、距離ができる
パターン2は嫌ですよね。なので結局、お互いが悩みを打ち明けることができず、表面上の付き合いを続けてしまうことになります。
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「囚人のジレンマ」から学べること
勇気を出してオープンになる
「囚人のジレンマ」の一番重要なポイントは、AとBが別室にいるために、お互いが話し合えないという点です。
もし二人が話し合える状況であれば、もしかすると二人とも黙秘し、懲役2年という最良の結果を得られたかもしれません。
つまり、お互いが何を考えているか分からないという状況が、結果を悪くしているのです。
日常生活でも、もしあなたが勇気を出して自分の考えをオープンにすれば、少なくとも相手から見て「何を考えているか分からない」という状態を回避することができます。
そのうえで、相手もオープンなスタンスになってくれれば、力を合わせて最良の結果を出すことができるでしょう。
まとめ
この記事では、「囚人のジレンマ」について解説しました。
「囚人のジレンマ」では、コミュニケーションを遮断された二人が、自分たちにとってベストな選択ができないという結論になります。
私たちの日常生活でも、「囚人のジレンマ」と似たような状況がありますが、自分から積極的にコミュニケーションを取っていくことで、このジレンマを克服できる可能性があります。