プラグマティズムは、1870年代のアメリカで発祥した思想です。
日本語では「実用主義」「道具主義」などと訳されます。
この記事では、プラグマティズム思想についてわかりやすく解説します。
また、プラグマティズムの代表的な哲学者やおすすめ書籍を紹介します。
- プラグマティズムがどのような思想か
- プラグマティズムの代表的な哲学者
- プラグマティズムのおすすめ入門書
プラグマティズムとは?
時代背景
プラグマティズム思想を理解するうえで、当時の時代背景を理解することが重要となります。
まず、1859年にイギリスのチャールズ・ダーウィンが『種の起源』を発表し、進化論を提唱しました。
ダーウィンは動植物の観察を通じて、人間やサルのみならず、猫や魚などすべての生物は単一の祖先から派生したのだと主張しました。
しかし、キリスト教ではすべての生物は神が創造したとされているため、ある生物が別の生物に進化することはありえないと考えられてきました。
そして、進化論を信じる人々とキリスト教を信じる人々がそれぞれの立場から「それぞれの正しさ」を主張して、泥沼の争いが起きてしまいました。
また、1861年にはアメリカで南北戦争という大規模な内戦が起こりました。
南北戦争では奴隷制や貿易のあり方が争点となりましたが、このときも異なる立場の人々が「それぞれの正義」を主張したことによって争いが起きています。
南部 | 北部 | |
---|---|---|
奴隷制 | 賛成 | 反対 |
貿易 | 自由貿易 | 保護貿易 |
政治体制 | 地方分権 | 中央集権 |
実用性の重視
こうした時代背景の中で、プラグマティズムの哲学者たちは、それまでの「絶対的な真理を考える」というスタンスを見直し、「役に立つものが真理である」という姿勢を取りました。
プラグマティズムでは、真理とは絶対的なものではなく、実際に役に立つかどうかによって定義されるべきだと主張します。
たとえば、天気予報で「明日は台風が来ます」と言っていたとします。
この天気予報が「真理」なのかどうかを考えてみましょう。
普通に考えると、
- 台風が来たら ⇒ 当たり(真理)
- 台風が来なかったら ⇒ はずれ(真理ではない)
となりそうです。
しかしプラグマティズムでは、この予報が「真理」であるかどうかは、台風が来たかどうかではなく、予報が役に立ったかどうかで判断します。
まず、実際に台風が来た場合は予報が役に立ったことになるので、真理であったと判断します。
また、仮に天気予報がはずれ、台風ではなく普通の雨が降った場合も、天気予報を信じてレインコートを持って行った人は「予報を聞いておいてよかった」と思うはずです。
つまり、「台風が来る」という文字通りの事実は起こりませんでしたが、「台風が来る」という予報は結果的に人々に良い影響を与えたため、その予報は真理であったと解釈するのです。
このように、プラグマティズムでは真理が実際の結果にどのような影響を与えるかを考え、理論よりも実践の効果を優先します。
一言でいうと、「結果オーライ」ということです。
プラグマティズムの代表的な哲学者
チャールズ・サンダース・パース
プラグマティズムの創始者であるパースは、何かが良い結果を生み出すならば、それが「真実」であると主張しました。
この考え方は「プラグマティズムの格率」と呼ばれ、プラグマティズム思想の基本的な考え方となっています。
ウィリアム・ジェームズ
ジェームズは、「祈り」や「信仰」といった宗教的な経験が個人に与える影響を考えました。
たとえば、家族が病気になってしまった時に宗教的な祈りを捧げることは、医学的な効果は得られないと思われます。
しかし、祈ることによって自分の内面にある不安を取り除くことができたとしたら、自分にとってメリットがあったと解釈することができます。
この意味では宗教的な経験が役に立っているため、その人にとっては「真実」であるとジェームズは主張しました。
ジョン・デューイ
デューイは、何かの問題を解決する際に知識を道具として扱うことを重視しました。
たとえば、割り算そのものに価値があるのではなく、私たちは割り算を使って買い物をしている時に割引後の価格を知ったり、調味料の量を調節したりすることができます。
この時私たちは、買い物や料理という日常の「問題」を解決するために、割り算という「知識」を「道具」として使用しています。
デューイはこのような考え方を「道具主義」と呼びました。
実践!プラグマティズムを生かす方法
目的をはっきりさせる
プラグマティズムでは、「正しいと思えるかどうか」よりも「どのように役立つか」という観点で物事を考えます。
たとえば、プログラミングを学びたいと思ったら、まずは入門書を最初から読んだり、スクールに通ったりすることを考えがちです。
しかし、それらの方法では、成果を出すうえでは必要のない知識も一緒に学ぶことになってしまいます。
そこで、たとえば「スマホアプリを1つ制作する」というように、プログラミングを学ぶ目的を最初に定義してしまうことをおすすめします。
漠然と「プログラミングを学びたい」と考えるのではなく、「スマホアプリを制作するためにはどんな知識やツールが必要か」という観点で勉強することによって、最終成果につながるものとそうでないものがはっきり見えてくると思います。
プラグマティズムのおすすめ書籍
まとめ
この記事では、プラグマティズムについてわかりやすく解説しました。
プラグマティズムは一言でいえば「結果オーライ」の哲学です。
人生でよい結果を出したいとき、前を向いて生きたい時に、背中を押してくれることでしょう。
この記事によってプラグマティズムに興味を持っていただければ嬉しいです。