功利主義は、18世紀のイギリスで発祥した哲学の思想です。
この記事では、功利主義について具体例を用いてわかりやすく解説します。
- 功利主義の概要
- 功利主義の代表的な哲学者
- 功利主義のおすすめ入門書
- 私たちが功利主義から学べること
功利主義とは?
功利主義とは、人々の幸福を最大化させることが正義であるという考え方です。
例えば、従業員4人の会社の資金繰りが悪化して、1人の社員をリストラしなければ倒産してしまう状態であったとします。
この場合、功利主義では1人をリストラする方が正しいと考えます。
なぜなら、解雇される社員はもちろん不幸ですが、現実的にその1人を守ろうとすると会社が倒産してしまい、4人全員が職を失うことになってしまうからです。
功利主義は、このようなリソースが限られている状況において、ベストな選択を導き出すための有効な思考法です。
功利主義の特徴
最大多数の最大幸福
「最大多数の最大幸福」とは、最も多くの人に最大の幸福をもたらす行為が正義であるという考え方です。
この「最大多数の最大幸福」は功利主義の根幹となるキーワードであり、「功利主義=最大多数の最大幸福」と言っても差し支えないくらいです。
結果主義
功利主義は意思決定の過程よりも結果を重視します。
例えば、転職の際に働きやすさを重視するか、収入を重視するかで悩むことがあります。
この場合、功利主義では収入を重視して決めることになります。
なぜなら、どのような仕事をするか(=過程)よりも、その仕事によってどれくらいの収入を得ることができるか(=結果)を優先するためです。
集合的なアプローチ
功利主義では、個人の利益よりも集団全体の利益を重視します。
例えば、国民の90%に給付金を支給する政策があったとします。
90%の国民は幸福になりますが、残りの10%の人々はプラスもマイナスもないため、国民全体としては幸福になります。
しかし、自分が10%の立場だったら、実際に損はしていないとはいえ何か嫌な気持ちになりますよね。
このように、功利主義の考え方を徹底すると、集団全体の利益を重視する過程で個人の視点がないがしろにされてしまう可能性があります。
功利主義の代表的な哲学者
ジェレミー・ベンサム
ベンサムは、「最大多数の最大幸福」を提唱し、功利主義の創設者となりました。
ベンサムによれば、人間の幸福は測定可能であり、すべての人間の幸福の総量が最大になるような行動や政策が正義となります。
ちなみに、ベンサムは法律家としても活躍し、功利主義の思想に基づく法律を提案する活動をしていました。
ジョン・スチュアート・ミル
ミルはベンサムの理論を一部修正し、功利主義をさらに発展させました。
ミルは、人間の幸福は数値で計測することはできないため、幸福の量ではなく質を最大化させることが正義であると主張しました。
功利主義から学べること
「お金」以外の要素を深堀りする
ビジネスでも日常でも、私たちは「お金だけの問題じゃない」という言葉を使うことがあります。
そんな時は、「お金」以外の何を重視しているのかを自分に問いかけてみてはいかがでしょうか。
そして、その重視している「何か」を最大化させるにはどんな行動をとれば良いのかを考えてみましょう。
場合によっては、実は「何か」は存在せず、お金の損得で考えるのが嫌だとか、相手の言うことをただ否定したいだけだった、という新事実が判明するかもしれませんよ。
功利主義を学ぶためのおすすめ入門書
(おまけ)功利の怪物
功利主義に対する有名な批判として「功利の怪物」という思考実験があります。
あるところに、普通の人よりも1,000倍の幸せを感じられる「功利の怪物」がいたとします。
例えば、普通の人がケーキを食べた時に1ポイントの幸せを感じられるとしたら、功利の怪物は同じケーキで1,000ポイントの幸せを感じることができます。
この場合、普通の人ではなく功利の怪物にケーキを与えた方が、世の中全体の幸福が最大化されます。
そして、ケーキ以外の様々な幸福も、普通の人ではなく功利の怪物に与えるべきということになり、怪物だけが幸せになるべきという結論になってしまいます。
「功利の怪物」の思考実験は、功利を徹底してしまうと人々の権利がないがしろにされてしまうということを示していると言えます。
まとめ
この記事では、功利主義についてわかりやすく解説しました。
功利主義を一言で表すと、「最大多数の最大幸福を追求する哲学」です。
功利主義は批判されることも多いですが、現代でもビジネスの意思決定のほか、国の政策決定や私たち個人の選択に至るまで広く適用されている哲学です。
功利主義をきっかけに、色々な哲学に興味を持ってもらえたら嬉しいです。