唯名論と実在論をわかりやすく解説!代表的な哲学者やおすすめ入門書を紹介

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唯名論と実在論は、中世ヨーロッパから現代まで語り継がれてきた思想です。

この記事では、唯名論と実在論について具体例を交えながらわかりやすく解説します。

また、唯名論と実在論の代表的な哲学者やおすすめの入門書を紹介します。

  • 唯名論と実在論がどのような思想か
  • 唯名論と実在論の代表的な哲学者
  • 唯名論と実在論のおすすめ入門書

唯名論とは?

リンゴとトマトの写真

唯名論とは、普遍的な概念は現実には存在しないという考え方です。

たとえば、「赤」という言葉を考えてみましょう。

唯名論の考え方によれば、「赤」という言葉は、リンゴやトマトの色を表すために人間が作った言葉にすぎず、現実の世界には「赤」というものは存在しません。

リンゴとトマトは存在するが、「赤」は存在しない

真っ赤な壁や赤い絵の具なども、赤い「何か」であって、「赤」そのものではありませんよね。

このように唯名論では、リンゴやトマトなどの「ひとつひとつの赤いもの」の背後にある「赤」という普遍的な概念は存在しないものだと考えます。

唯名論の代表的な哲学者

ウィリアム・オッカム(オッカムのウィリアム)

オッカムのウィリアムの肖像画

ウィリアム・オッカム(1288頃 - 1347頃)
self-created (Moscarlop), CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

オッカムは「人間」や「美」といった普遍的なものはただの名前にすぎず、現実には個々の具体的なものしか存在しないのだと主張しました。

オッカムの実在論

また、オッカムは、同じ現象を説明できる理論が複数ある場合は、最もシンプルな理論を選ぶべきであると主張しました。

たとえば、世界にリンゴとトマトが存在するという現象を説明する時に、

  • 「赤という概念」が存在し、それによって「赤いリンゴ」と「赤いトマト」が存在する
  • 「赤いリンゴ」と「赤いトマト」が存在する

という2通りの説が考えられます。

①の説では、「赤という概念」「赤いリンゴ」「赤いトマト」の3つの要素によって、初めて説明が成り立っています。

①説のイメージ

一方、②の説では、「赤いリンゴ」と「赤いトマト」の2つの要素のみで現象を説明しており、よりシンプルな理論であると言えます。

②説

オッカムはによるこの主張は、その鋭さから「オッカムの剃刀(かみそり)」と呼ばれました。

実在論とは?

赤い抽象画

実在論とは、普遍的な概念が実際に存在するという考え方です。

実在論では、赤いリンゴや赤いトマトといった具体的な物とは別に、「赤」という概念が存在すると主張します。

また、実在論では、この「赤」という普遍的な概念が、リンゴやトマトに先立って存在すると考えます。

「赤」という概念が先に存在する

ちなみに、古代ギリシャの哲学者プラトンは、すべての存在の背後には「イデア」という理想が存在すると主張しましたが、実在論が主張する「普遍的な概念」はこの「イデア」の考え方にとてもよく似ています。

実在論の代表的な哲学者

トマス・アクィナス

トマス・アクィナスの肖像画

トマス・アクィナス(1225頃 - 1274)

トマス・アクィナスは、神学者の立場から実在論を主張しました。

アクィナスによれば、この世界は神が創造したものであるため、すべての存在は普遍的な真理に基づいて設計されています。

さらにアクィナスは、神の存在を論理的に証明するために、「五つの道」という理論を主張しました。

(おまけ)中世ヨーロッパの普遍論争

アダムとイブ

中世ヨーロッパにおける唯名論と実在論の対立は、「普遍的なものがあるかどうか」が争点となったため、「普遍論争」と呼ばれています。

当時のヨーロッパでは、キリスト教会が絶大な権力を持っていました。

キリスト教の教えでは、神が創造した最初の人間であるアダムとイヴが禁断の果実(=リンゴ)を食べてしまったことが原因で、すべての人間が生まれつき「原罪」を負っているとされています。

この説明では、「人間」という普遍的な存在が前提となっています。

なぜなら、仮に「人間」という概念が無ければ、禁断の果実を食べた罪はアダムとイヴだけが負っていることになり、すべての人間が「原罪」を負っているという説明と矛盾してしまうためです。

そのため、普遍的な存在を否定する唯名論者たちは「異端」とみなされ、教会によって弾圧を受けていました。

実践!唯名論と実在論を現代社会で生かす方法

考える女性

具体例から普遍的な結論を導けるかどうかを考える

たとえば、パートナーと「幸せ」について話し合う時、「ペットを飼いたい」とか「マンションに住みたい」といった、具体的な「幸せ」を話すことになります。

しかし、「幸せ」というものは人によって定義が異なるため、二人の「幸せ」はそのままでは実現できない可能性があります。

そこで、両者の具体的な「幸せ」をどちらも含むような普遍的な「幸せ」が存在するかどうかを考えてみましょう。

この例では、「ペット可のマンションに住む」というような解決策が考えられます。

しかし、もしかすると両立できない「幸せ」をお互いが主張しあっている場合もあるかもしれません。

そんな時は唯名論と実在論の議論を思い出していただき、まずは普遍的な結論が出せるかどうか、ということに焦点を当ててみてはいかがでしょうか。

唯名論と実在論のおすすめ入門書

唯名論と実在論を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。

 

 

まとめ

この記事では、唯名論と実在論についてわかりやすく解説しました。

唯名論と実在論は普遍的なものが存在するかどうかを考える哲学であり、中世ヨーロッパの普遍論争をきっかけに発展しました。

現代社会でも、具体的なものに普遍性があるかどうかを考えることで、何か新しいことに気づかされることがあるかもしれません。