「テセウスの船」とは、「同一性」についての哲学的な思考実験です。竹内涼真さん主演のドラマのテーマにもなっていましたね。
この記事では、「テセウスの船」について具体例を用いて分かりやすく解説します
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「テセウスの船」とは?
その昔、ギリシャの英雄テセウスという人が船を所有していました。その船は経年劣化で部品が傷んできたため、壊れた部品は徐々に新しいものと交換されていきました。
そして、最終的には船の全ての部品が交換され、もとの部品はひとつも残っていない状態になりました。
ここで問題が生まれます。全ての部品が交換された後の船は、最初のテセウスの船と同じ船と言えるのでしょうか?
これが「テセウスの船」の問いです。
「テセウスの船」の具体例
「テセウスの船」の具体例を紹介します。
例えば、病気やケガが原因で、脳や臓器、手足といった身体の全ての部分を他の人から移植されたとします。この場合、移植前と移植後では2人は同じ人物と言えるでしょうか。
筆者の主観ですが、何となく「別人だ」と思いませんか。
それでは、私の5年前の写真と今の私を比べた場合はどうでしょうか。
実は、人間の細胞は常に新しく生まれ変わっており、5年も立つと全ての細胞が別のものになっていると言われています。そのため、「身体のパーツが当時と同じものかどうか」という視点で見れば、全身移植の例と同様、2人は別人ということになってしまいます。
しかし、普通に考えて、細胞が生まれ変わっていても、何年たっても「私は私」と言いたいですよね。
「テセウスの船」の本質は「同一性」
「テセウスの船」は、「同一性」という哲学のテーマと深く関わっています。「同一性」とは、2つのものが同じなのか、異なるのかという問題です。
「テセウスの船」には、さらなる展開もあります。交換された全ての部品を使って新しい船を組み立てた場合、この新しい船はテセウスの船と言えるだろうか、という問題です。
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「テセウスの船」から学べること
現代に生きる私たちは、「テセウスの船」からどんなことを学べるでしょうか。
それは、何かが同じかどうかについて、感覚的な結論と論理的な結論が必ずしも一致しないということだと思います。
そして、人はそれぞれ違う感覚を持っているので、自分が「絶対に同じものだ」と思っていることでも、他者は「絶対に違うものだ」と考えている場合があるということになります。
この場合は、自分の意見をゴリ押ししても、良いコミュニケーションは生まれないでしょう。
一方で、「テセウスの船」の錯覚を上手く利用する方法もあります。例えば、今の自分は5年前の自分とは別人なのだと思い込んでしまえば、過去のトラウマを克服したり、それまでの自分では考えられなかったようことに挑戦したりすることができるかもしれません。
まとめ
この記事では、「テセウスの船」という哲学的な問題を解説しました。
「テセウスの船」は物や人の「同一性」に関する思考で、現代社会に生きる私たちにとっても非常に考えさせられる問題です。
この記事が「テセウスの船」や哲学の面白さに少しでも興味を持ってもらえるきっかけになれば幸いです。