ジョン・デューイ(1859 - 1952)は、アメリカの哲学者であり、プラグマティズムの思想家として知られています。
このページでは、道具主義、学校と社会といったデューイの思想を分かりやすく解説します。
また、デューイの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- デューイの主な思想
- デューイの思想を現代社会で生かす方法
- デューイのおすすめ入門書
デューイの生涯と時代背景
デューイはアメリカの中流家庭に生まれ、大学卒業後は高校や小学校の教師として働いていました。その後、大学院で心理学を学び、研究者としてのキャリアを開始しました。
デューイの主著『学校と社会』では、学校のあるべき姿が語られているのですが、研究者になる前から教育への関心を持っていたことが分かります。
また、デューイが生きた時代は第二次産業革命が進行し、都市化や教育制度の変革など、社会全体が激しい変化を遂げた時代でした。
これらの社会的変動も、実践を通して現実を改善していくという、デューイの思想に影響を与えたと思われます。
デューイの主な思想
デューイの主な思想を解説します。
道具主義
デューイはしばしば、プラグマティズムの思想家としてカテゴライズされますが、デューイ自身は「道具主義者」を自称していました。
プラグマティズムの思想は、チャールズ・サンダース・パースやウィリアム・ジェームズによって主張されました。
詳しくは下記の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
デューイが主張する「道具主義」は、物事の有用性を重視する「プラグマティズム」とよく似ていますが、焦点の当て方に若干の違いがあります。
プラグマティズムは、思考や信念が現実世界でどのように機能するか、つまり「どれほど実用的であるか」を調べることに重点を置いています。
これに対して「道具主義」は、思考や行動を「道具のように使うことができる」という部分に焦点を当てています。
デューイによれば、思考や行動は、問題を解決したり、新しいことを理解したり、未来を形成するための「道具」であると言います。
学校と社会
デューイは、著書『学校と社会』の中で、学校や教育のあるべき姿を描きました。
デューイは、教育とは学生を社会的な状況に適応させるだけでなく、社会そのものを改善する手段でもあるべきだと考えていました。
そのためデューイは、学校は社会の縮図であるべきだと言います。
つまり、学校は単に学問を習得する場ではなく、子供たちが社会的な関係性や責任を学ぶ場でもあるべきであるという考え方です。
デューイは、学生が現実の世界での問題解決に取り組むためには、単に教科書の知識を覚えるだけではなく、社会の中で何かを学び、批判的思考や問題解決のスキルを養うことが必要であると考えました。
また、デューイは学習体験が個々の学生の関心に基づいているべきで、教師は学生が自己主導的な学習を行えるような環境を提供する役割を持つべきだと主張しました。
そのため、彼は教科書中心の教育よりも、実際的な経験や実験、探究を通じて学ぶ教育方法を提唱しました。
これらの理念は、現代の学校教育ではもはや常識となっていますが、当時としては画期的な考え方でした。
他の思想との関係
デューイは、ドイツ観念論の哲学者であるヘーゲルの影響を受けていたと言われています。
ヘーゲルの哲学は、ある命題(テーゼ)とそれに反する別の命題(アンチテーゼ)が合わさることによって、より高次の命題が生まれるという考え方です。
デューイの道具主義思想も、思考や行動を重ねることによって、現実をより良いものにしていこうという考え方なので、ヘーゲル哲学の影響がみられます。
ヘーゲルの思想については、下記の記事で詳しく解説しています。
ぜひご一読ください。
ちなみに、デューイと並んでプラグマティズムの思想家とされるパースやジェームズはイギリス経験主義をベースとしており、この意味でもデューイの道具主義思想が独自の思想であったことが分かります。
実践!デューイの思想を現代社会で生かす方法
デューイの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
エラーを恐れずにトライする
「トライ&エラー」という言葉があります。これは試行によって得られた結果をもとに、作戦を微修正していくという考え方です。
デューイによれば、思考や行動を繰り返すことによって、現実をより良いものに変えていけると言います。
つまり、エラーを恐れずに行動した分だけ、現実を改善していけるということです。
逆に、エラーを恐れるあまり行動をしなければ、現実は何も変わらないということもできます。
なかなか背中を押される哲学ですね。
デューイのおすすめ入門書
デューイの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
(おまけ)デューイの面白エピソード
自分で学校を作る
デューイは「実験学校」と称して、自ら小規模な学校を設立しています。
そこでは教科書中心の教育ではなく、生徒の関心に基づいた体験的な教育が行われました。
この実験で得られた結果をもとに、名著『学校と社会』が書かれました。
思想だけでなく、自身の人生も主体的・実践的なものであったことが伺えますね。
まとめ
このページでは、道具主義や学校と社会といったジョン・デューイの思想を解説しました。
デューイの思想は現代の学校教育で幅広く応用されていますが、個人の人生を豊かにするためにも応用できる考え方だと思います。