ウィリアム・ジェームズ(1842 - 1910)は、プラグマティズム思想の哲学者です。
このページでは、ジェームズの思想を分かりやすく解説します。
また、ジェームズの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- ジェームズの主な思想
- ジェームズの思想を現代社会で生かす方法
- ジェームズのおすすめ入門書
ジェームズの生涯と時代背景
ジェームズはアメリカの裕福な家庭に生まれました。
その後、一家はヨーロッパに移住し、フランスやイタリアなど各地で生活していました。
ジェームズが受けた教育は多文化的で、幅広い学問分野に触れる機会がありました。
このように、幼少期に多様な文化・教育に触れたことが、後の心理学、哲学、宗教研究への興味と深い理解を養う基盤となったと思われます。
その後は大学で医学を学び、30代には生理学・解剖学・心理学の研究者として活躍しました。
特に心理学の分野では、アメリカ初の心理学研究所を設立し、後に「心理学の父」と呼ばれることとなります。
ジェームズの主な思想
ジェームズの主な思想を解説します。
プラグマティズム
ジェームズの思想の根底には、プラグマティズムという考え方があります。
プラグマティズムとは、真実とは実用的に役立つものであり、思想や信念の価値はその効果や結果によって決まるという考え方です。
例えば、ある食品Aの成分が理論的にはダイエット効果があるはずなのに、実際にAを食べても体重が減らなかったとします。
逆に、食品Bの成分にはダイエット効果は無いはずなのに、実際にBを食べたら体重が減ったとします。
この場合、プラグマティズムの思想では、「食品Bにダイエット効果がある」という結論を出します。
つまり、プラグマティズムとは、理論的に正しいかどうかは横において、実際に行動してみた結果を見て、何が正しいかを決めるという考え方なのです。
自由意志
ジェームズはまた、「自由意志」の存在を強く主張しました。
自由意志とは、私たち人間の中にある、思考や行動を決める意志のことを言います。
ちなみに、自由意志の存在を認めない立場を「決定論」といいます。
決定論は、人間の行動は外部要因によってあらかじめ決定されているため、私たちは自由に思考することはできない、という考え方です。
ジェームズは「人間は未来を選択する自由がある」と考え、その選択が個々人の現実を創り出すと主張しました。
この考え方は、私たちが遭遇する問題や課題に対して、主体的に行動を選ぶことの大切さを示しています。
例えば、難しい問題に直面したとき、あきらめてしまうか、解決策を探すかは、それぞれの「自由意志」による選択です。
この選択が現実を変化させ、新たに「真実」が生まれることになります。
宗教的経験
また、ジェームズは宗教的経験についても深く考えました。
彼は、宗教的経験は個人の内面的な経験であり、それが人間の生活に意味を与える、と主張し、個々人の生活にとってメリットがあるという理由から、宗教的経験を肯定しました。
例えば、家族が病気になった時、宗教的に祈りを捧げることは、病気を治療する物理的な効果は無いかもしれません。
しかし、もし「祈り」という宗教的経験をすることで、自分の内面にある不安を取り除けるのであれば、その経験は自分に力を与えていることになります。
従って、その宗教的経験は、自分にとって「真実」の価値を持つということになります。
他の思想との関係
パースの影響
ジェームズのプラグマティズムの思想は、彼の先輩である哲学者チャールズ・サンダース・パースから影響を受けています。
パースは最初に「プラグマティズム」の概念を提唱しましたが、ジェームズはそれをさらに発展させ、広く普及させました。
パースのプラグマティズムは、思想の真実性はその思想がもたらす実際的な結果で判断するという考え方でした。
しかし、ジェームズのプラグマティズムは更に個々の人間の経験と意義への強調が加わり、より人間中心的なものとなりました。
パースの思想については、下記の記事で詳しく解説しています。
ぜひご一読ください。
その後の思想への影響
ジェームズのプラグマティズムは、20世紀の哲学者たちに大きな影響を与えました。
特にジョン・デューイは、パースとジェームズの理論をさらに発展させ、「道具主義」という思想を展開しました。
これは、「知識」というものを「何か良い結果を出すための道具」のようにとらえる思想で、プラグマティズムの完成形と言える考え方です。
デューイの思想については、下記の記事で詳しく解説しています。
実践!ジェームズの思想を現代社会で生かす方法
ジェームズの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
主観を尊重する
科学技術が発達した現代では、全ての人が納得できるような客観的で合理的な思考が「正解」になりがちです。
しかし一方で、私たち人間はそれぞれ異なった価値観を持っており、時には主観的で非合理的な思考や行動をすることがあります。
話し合いの際に、もし相手の主張が主観に基づくものであっても、合理性を盾に論破するのではなく、その主観を尊重してみてはいかがでしょうか。
なぜなら、その主観は自分にとっては「ただの感想」ですが、相手にとっては「真実」かもしれないからです。
その「真実」を尊重することで、より納得感のある結論にたどり着けるかもしれません。
ジェームズのおすすめ入門書
ジェームズの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
(おまけ)ジェームズの面白エピソード
名言
ジェームズの有名な言葉で、
心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
というものがあります。
自分の心構えや行動次第で、人生を変えられるということで、野球の松井秀喜選手の座右の銘にもなっているそうです。
これから何かにチャレンジする人には、心強い言葉ですね。
まとめ
このページでは、プラグマティズムの思想家であるウィリアム・ジェームズの思想を解説しました。
彼の思想は、人生を主体的に生きるうえでとても参考になると思います。