カール・ヤスパース(1883 - 1969)は、ドイツの精神科医であり、実存主義の哲学者です。
この記事では、「限界状況」「包括者」といったヤスパースの思想を分かりやすく解説します。
また、ヤスパースの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- ヤスパースの思想
- ヤスパースの思想を現代社会で生かす方法
- ヤスパースのおすすめ入門書
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ヤスパースの生涯と時代背景
ヤスパースは1883年にドイツで生まれ、生涯で2度の世界大戦を経験しました。
大学では初めは法学を専攻していましたが、途中で医学へ転向し、精神科医として働きました。
その後、哲学の世界へと進み、ナチス政権下のドイツにおいて自己と世界の関係について独自の哲学を打ち立てました。
ヤスパースの主な思想
ヤスパースの主な思想を解説します。
限界状況
限界状況とは、人が直面する苦悩、罪悪感、孤独といった、心の平穏を乱されるような状況を言います。
ヤスパースによれば、この限界状況が哲学を学ぶきっかけとなります。
そして、人は哲学を通して自分自身を深く理解することができるようになります。
包括者(超越者ともいう)
包括者とは、全てを包み込む存在のことで、端的に言えば「神」のことです。
ヤスパースによれば、限界状況に置かれた人は自己について深く考え、最終的には包括者の存在にたどり着きます。
そして、人は包括者に心を開くことで、主観と客観を統合させることができるとヤスパースは主張しました。
ざっくり言い換えれば、人は解決できない問題に直面した時に、神様を信じることで自分と世界の境界線を取り除き、自己と同様に世界や他者を感じることができるということです。
実存的交わり
「実存的交わり」とは、他者との深い関わりの中で自己を理解し、成長するという考え方です。
ヤスパースによれば、人は孤独な存在であり、他者との関わりによって初めて真の自己が形成されます。
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他の思想との関係
ヤスパースの「包括者」の考え方は、同じくドイツの哲学者であるカントの影響を受けていると思われます。
カントは人間が認識できない「物自体の世界」という概念を考えました。
また、個人の内面の問題を、信仰によって解決するスタンスは、実存主義の哲学者であるキルケゴールの影響も見られます。
さらに、他者との関わりを重視するヤスパースの思想は、ユダヤ人哲学者のハンナ・アレントに影響を与えています。
実践!ヤスパースの思想を現代社会で生かす方法
ヤスパースの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
人を頼る
ヤスパースによれば、人は他者との関わりの中で、真の自己を形成することができます。
つまり、一人で一生懸命考えることには限界があるということです。
日常生活の中でも、自分ひとりでは解決できないことは、どんどん人を頼ってしまいましょう。
逆に、人から頼られた時には自分事のように協力することで、自分の価値を高めていくことができるでしょう。
ヤスパースのおすすめ入門書
ヤスパースの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
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(おまけ)ヤスパースの面白エピソード
妻を守って立てこもる
ヤスパースの妻はユダヤ人で、ナチスの迫害を受ける可能性がありました。
しかし、ヤスパースは妻と共に自宅に立てこもり、最後の最後までナチスに抗いました。かっこいいですね。
ラジオでの哲学講義
ヤスパースはラジオで哲学の講義を行ったことでも知られています。
ヤスパースは、難解な哲学を一般の人々に広めることを重視していたようです。
まとめ
この記事では、「限界状況」「包括者」といったヤスパースの思想を解説しました。
ヤスパースの思想は、自分の殻に閉じこもらず、積極的に他者と関わることの大切さを教えてくれます。