デュルケムの思想をわかりやすく解説!集合表象とは?アノミーとは?

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エミール・デュルケム(1858 - 1917)は、フランスの社会学者・哲学者です。
この記事では、自殺論アノミーといったデュルケムの思想を分かりやすく解説します。
また、デュルケムの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。

  • デュルケムの思想
  • デュルケムの思想を現代社会で生かす方法
  • デュルケムのおすすめ入門書

デュルケムの生涯と時代背景

デュルケムは、1858年にフランスのユダヤ人家庭に生まれ、大学では哲学の教授を務めました。

その後、ドイツに留学して実証主義を学び、帰国後は代表作である『社会分業論』『自殺論』を執筆しました。

晩年は教育に関する著作を発表していましたが、第一次世界大戦で息子を失ったことをきっかけに大学での活動を中止し、表舞台に復帰することはありませんでした。

デュルケムの主な思想

デュルケムの主な思想を解説します。

集合表象

「集合表象」とは、社会全体で共有される信念や価値観のことです。

例えば、日本人の多くが正月に家族で集まることは、日本人が共有している価値観が背景にあります。

デュルケムは、集合表象があることによって社会が1つのまとまりになれるのだと主張しました。

社会学主義

「社会学主義」とは、社会を一つの生き物として捉える考え方です。

デュルケムは個人の行動や思考が、その人の意志だけではなく、社会のルールや習慣に大きく影響されると主張しました。

アノミー

「アノミー」とは、社会の秩序が乱れ、統制が効かなくなっていく状況をいいます。

デュルケムは、社会が急激に変動した時にアノミーが生じ、個人の行動に影響を与えると主張しました。

例えば、震災で国内政治が機能しなくなった国では、強盗が増えると言われています。

普段は犯罪をしないような人でも、罪を犯しても逮捕されない社会の中では強盗をしてしまうことがあるのです。

自殺の4類型

デュルケムは、著書『自殺論』の中で、人間の自殺を4つの類型に区分しました。

利他的自殺

「利他的自殺」とは、個人が社会の価値観に縛られているために起きる自殺です。

利他的自殺のケースでは、個人は社会が求める美徳を実践するために自殺を強要されてしまいます。

例えば、軍隊の無謀な作戦に参加して殉死することが考えられます。

利己的自殺

「利己的自殺」とは、利他的自殺とは逆に、個人と社会のつながりが弱いために起きる自殺です。

利己的自殺のケースでは、宗教や共同体といった個人が拠り所とする集団が無いため、自殺を踏みとどまることができなくなってしまいます。

例えば、田舎から上京して、都会で孤立して自殺してしまうことが考えられます。

デュルケムは、近代の個人主義思想によって、人々の孤独が大きくなったために利己的自殺が増えたと主張しました。

アノミー的自殺

「アノミー的自殺」とは、社会からの規制が少ないために起きる自殺です。

社会からの規制が少ないと、個人は自分勝手な行動をするようになり、欲望がどんどん膨れていきます。

そして欲望を実現できないことに幻滅し、無力感を抱いて自殺をしてしまいます。

例えば、FX取引にのめり込んで大損を抱えてしまい、自殺をしてしまうことが考えられます。

宿命的自殺

「宿命的自殺」とは、アノミー的自殺とは逆に、社会の規範による拘束力が非常に強いために起きる自殺です。

デュルケムは宿命的自殺については詳しく触れていないのですが、例えば、身分の違う相手を好きになってしまい、恋愛関係になれないために自殺をしてしまうケースが考えられます。

  利他的自殺 利己的自殺 アノミー的自殺 宿命的自殺
定義 個人が社会の価
値観に縛られて
いるために起き
る自殺
個人と社会のつ
ながりが弱いた
めに起きる自殺
社会からの規制
が少ないために
起きる自殺
社会の規範によ
る拘束力が非常
に強いために起
きる自殺
軍隊の無謀な
作戦に参加して
殉死
田舎から上京し
て都会で孤立
して自殺
FX取引にのめ
り込んで大損を
抱えてしまい、
自殺
身分の違う相手
を好きになって
しまい、恋愛関
係になれないた
めに自殺

他の思想との関係

過去の思想からの影響

デュルケムは、オーギュスト・コントが提唱した社会学を独立した学問として確立したと評価されています。

コントは社会を科学的に分析する実証主義という考え方を主張しました。 

その後の思想への影響

デュルケムの大きな功績は、社会学を1つの学問分野として確立したことです。

特にアノミーの概念は、その後の社会学者たちが社会と個人の関係を分析する際に参考にされました。

実践!デュルケムの思想を現代社会で生かす方法

デュルケムの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。

自分の価値観を持ち、他者と共有する

デュルケムによれば、人は社会との関係が強すぎたり弱すぎたりする時に自殺に至ってしまいます。

自殺を避けるためには、まずは普段から自分の価値観を持ち、言語化することが重要です。

そして、他者との交流の中で、自分の価値観を共有できていると実感することで、心理的安定を手に入れられるでしょう。

デュルケムのおすすめ入門書

デュルケムの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。

 

(おまけ)デュルケムの面白エピソード

デュルケムは、学者としての顔だけでなく、情熱的な教育者としても知られていました。

デュルケムは学生たちとの対話を大切にし、彼らの疑問や考えに耳を傾けることで、新しい視点を得ることが多かったと言われています。

まとめ

この記事では、自殺論やアノミーといった、デュルケムの思想を解説しました。

デュルケムは社会が個人に与える影響を考察し、人が自殺をしてしまう原因を4つに分類しました。

デュルケムの思想を学ぶことで、個人として社会とどのように向き合えば良いのかを考えるヒントを得られるでしょう。