ハーバート・スペンサー(1820 - 1903)は、イングランドの哲学者です。
この記事では、社会進化論や古典的自由主義といったスペンサーの思想を分かりやすく解説します。
また、スペンサーの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- スペンサーの思想
- スペンサーの思想を現代社会で生かす方法
- スペンサーのおすすめ入門書
スペンサーの生涯と時代背景
スペンサーは1820年にイングランドで生まれました。
父親と叔父は学校を経営しており、スペンサーに対して権威に対抗する思想を学ばせました。
その後、スペンサーは哲学だけではなく、倫理学、宗教学、人類学、経済学、政治理論、文学、天文学、生物学、社会学、心理学などの多くの分野で活躍しました。
スペンサーが活躍した19世紀後半のイギリスでは、チャールズ・ダーウィンの『種の起源』が出版され、人々の間に大きな議論を巻き起こしていました。
スペンサーの主な思想
スペンサーの主な思想を解説します。
社会有機体説
「社会有機体説」とは、社会を動物や植物のような一つの有機体と見なす考え方です。
具体的には、社会の中の政治、経済、教育といったパーツが、生物の脳、心臓、手足などのように、それぞれ特定の役割を果たして社会全体の機能を支えているイメージです。
社会進化論
「社会進化説」とは、社会が生物と同じように、進化の過程を経て発展するという考え方です。
スペンサーと同時代を生きた生物学者のチャールズ・ダーウィンは、すべての生物が長い時間をかけて、地球環境に適応する形で進化を遂げたと主張しましたが、スペンサーは社会そのものが進化していくと主張しました。
例えば、原始時代には社会は小さな集団でしたが、農耕や宗教の発達によって次第に大きな集団へと成長し、構造も複雑化していきました。
このように、スペンサーは社会が常に望ましい方向に進化していると主張しました。
古典的自由主義
「古典的自由主義」とは、政府の役割を考える時に、国民の自由や財産に対する政府の介入を最小限に抑えるべきだという考え方です。
スペンサーは、社会は自然と最適な形へと進化していくため、政府が余計な介入をすべきではないと主張しました。
例えば、徴税を必要最小限にとどめたり、公共事業なども民間企業に委ねるべきだとされます。
個々の国民の行動を自由にすることによって、社会の自然な発展を邪魔しないようにすべきということですね。
他の思想との関係
スペンサーの社会進化論は、当時の先進国が諸外国を植民地化し、世界の覇権を握ろうとすることを正当化した側面があります。
例えば、「社会が発展した西洋諸国がアフリカの未開社会を植民地化することで、アフリカ社会を前に進められる」といった論理によって、植民地化があたかも正義であるかのような主張がなされてしまいました。
また、スペンサーの古典的自由主義の理論は、個人の自由を最大限に尊重すべきというリヴァタリアニズム(=新自由主義)の思想に大きな影響を与えました。
実践!スペンサーの思想を現代社会で生かす方法
スペンサーの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
大きなストーリーを語る
仕事のプレゼンなどでは、思いついたことを主張するだけではインパクトに欠け、人の心を動かせないことがあります。
そんな時は、スペンサーの社会進化論を参考に、世の中の変化や会社そのものの将来を語り、その各論として自分の主張を位置づけてみてはいかがでしょうか。
同じ提案内容でも、大きなストーリーを語ることによって、その目的が明確になったり、「なんかすごい提案」という雰囲気を作ることができるでしょう。
スペンサーのおすすめ入門書
スペンサーの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
(おまけ)スペンサーの面白エピソード
ダーウィンとの関係
スペンサーはダーウィンの『種の起源』で語られた「自然選択説」(=自然に適応する形で生物が進化していくこと)を「適者生存」という言葉で表現したことで知られています。
ちなみに、スペンサーの父ジョージ・スペンサーは、ダーウィンの祖父エラズマス・ダーウィンが設立した協会で働いていました。
まとめ
この記事では、社会進化論や古典的自由主義といった、ハーバート・スペンサーの思想を解説しました。
社会進化論は、今では否定的に扱われることの多い説ですが、その後の社会に与えた影響は大きいため、現代社会に生きる私たちにとって、学んでおくべき重要な思想だと思います。