オーギュスト・コント(1798 - 1857)は、フランス社会学者・数学者・哲学者です。
この記事では、実証主義を中心とするコント思想を分かりやすく解説します。
また、コントの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- コントの思想
- コントの思想を現代社会で生かす方法
- コントのおすすめ入門書
コントの生涯と時代背景
コントは1798年にフランスのモンペリエで生まれ、パリの高等教育機関に入学し、数学を専攻しました。
しかし、学内騒動の首謀者の疑いをかけられ退学処分となってしまい、その後は在野の研究者として実績を残しました。
コントが活躍した19世紀前半のフランスでは、フランス革命後のナポレオン政権が崩壊し、革命前の体制に回帰しようとするウィーン体制へと移行する、動乱の時代でした。
また、産業革命の影響によって工業化が進み、産業社会に適した法制度への移行が求められていた時代でもありました。
コントの主な思想
コントの主な思想を解説します。
実証主義
「実証主義」とは、経験と観察に基づく科学的方法を重視する思想です。
つまり、実際に見て、触れて、確認できるものだけを信じるということです。
三段階の法則
「三段階の法則」とは、人類の精神が「神話的段階」「形而上学的段階」「科学的段階」の三段階を経て進化し、それに伴って人間社会も「軍事的段階」「法律的段階」「産業的段階」の三段階で進化してきたという考え方です。
それぞれの段階について解説します。
人類の精神の三段階
神話的段階
神話的段階では、人々は世界の分からないことを神話によって説明しようとします。
例えば、「宇宙はどのような姿か」という疑問に対し、月や星の位置を神様や動物の形に例え、神話を作ることによって解決します。
形而上学的段階
形而上学的段階では、人々は世界の分からないことを論理的に解き明かそうとします。
「形而上学」とは、プラトンのイデア論のように、現実世界とは別の超越した世界が存在することを論理的に考察する考え方です。
例えば、「宇宙はどのような姿か」という疑問に対し、天体の動きには何らかの法則があるということを突き止めるものの、完全に物理的には理解されず、論理によって地球を中心とした宇宙の姿を導きます。
科学的段階
科学的段階では、人々は世界の分からないことを実験や観察を通して理解しようとします。
例えば、「宇宙はどのような姿か」という疑問に対し、天体の動きを観察したり、宇宙にロケットを飛ばして他の星の物質を持ち帰って分析したりします。
人間社会の三段階
軍事的段階
軍事的段階では、軍事力を中心に社会が形成されます。
この段階では、人々は武力や戦争を通じて領土を拡大し、異民族や異文化を吸収していきます。
法律的段階
法律的段階では、法制度を中心に社会が形成されます。
この段階では、人々は法律に従って行動するため、社会の秩序や安定が法を通じて維持されます。
産業的段階
産業的段階では、産業を中心に社会が形成されます。
この段階では、企業による経済活動や技術革新によって、社会の構造が変化していきます。
社会学
「社会学」とは、社会を科学的に分析することで、より良い社会を築くヒントを探す学問です。
コントは、この社会学の創設者として知られています。
他の思想との関係
コントは当初、フランス啓蒙思想の影響を受けていました。
啓蒙思想とは、理性によって世界を解き明かしていこうという考え方で、ルソーが有名です。
しかし、コントは18才の頃に、サン・シモンという人物に出会い、思想を大きく転換します。
サン・シモンはアメリカ独立戦争に参加した後、フランス革命やナポレオン政権の崩壊を経験した思想家です。
サン・シモンは啓蒙思想に反対し、これからは産業と経済発展が社会の重要な要素になってくると主張していました。
コントはサン・シモンの影響で、啓蒙主義思想から産業中心的な思想へと転換していきました。
実践!コントの思想を現代社会で生かす方法
コントの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
トライ&エラーで解決する
私たちは、人間関係や人生の悩みを、やる気や根性で解決しようとしてしまいがちです。
しかし、現代社会は複雑なため、一見正しそうなやり方でも、何らかの要因によってどんなに頑張っても結果が出せないことがあります。
そんな時はコントの実証主義を思い出し、1つの方法を試してみて、うまくいかなければ別の方法を試して...というように、うまくいった方法が正しかったのだ、という考え方をしてみてはいかがでしょうか。
コントのおすすめ入門書
コントの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
(おまけ)コントの面白エピソード
波瀾万丈な女性関係
コントは27歳の時にカロリーヌという女性と結婚しました。
しかし当時はコントの学問がまだアカデミアの世界では受け入れられず、経済的に困窮する日々を送っていました。
カロリーヌは元娼婦で、コントと結婚してからもたびたび売春を繰り返していました。
コントはそんなカロリーヌに不満を持っていたようですが、実際にそれが家計を支えていた面もあり、止めることができなかったようです。
結局、コントが44歳の時に2人は離婚してしまいました。
その後、コントはクロディルドという29歳の女性と出会い、人生最大の恋に落ちます。
年の差カップルでしたが、コントの猛烈なアプローチによって婚約するまでに至りました。
しかし、クロディルドには持病があり、若くして病死してしまいました。
晩年のコントはクロディルドへの愛を具現化した「人類教」という宗教を提唱することとなります。
まとめ
この記事では、オーギュスト・コントの実証主義哲学について解説しました。