ユルゲン・ハーバーマス(1929 - )は、ドイツフランクフルト学派の哲学者です。
このページでは、対話的理性、公共圏といったハーバーマスの思想を分かりやすく解説します。
また、ハーバーマスの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- ハーバーマスの主な思想
- ハーバーマスの思想を現代社会で生かす方法
- ハーバーマスのおすすめ入門書
ハーバーマスの生涯と時代背景
ハーバーマスは、第二次世界大戦下のドイツで育ち、ナチスによるユダヤ人迫害の時代を経験しました。
ハーバーマスは、理性的であるはずの人間がなぜそのような惨劇を生み出してしまったのか、また、今後同じ惨劇を繰り返さないためにはどうすればよいか、という問いに向き合いました。
その結果、彼はフランクフルト学派の一員として、「対話的理性」という概念を中心とした思想を展開しました。
ハーバーマスの主な思想
ハーバーマスの主な思想を解説します。
道具的理性と対話的理性
ハーバーマスは、理性を「道具的理性」と「対話的理性」の二つに分類し、これらを区別しました。
道具的理性
道具的理性とは、目的を達成するための最適な手段を選び出す理性のことを言います。
例えば、学校まで最速で行く方法を考えている時は、「最速で移動する」という目的を果たすための「道具」として理性を使っていると言えます。
対話的理性
対話的理性とは、対話やコミュニケーションを通じて、相手との間に理解や合意を生み出す理性のことを言います。
例えば、友達と話し合って旅行先を決める時、相手を理解したり自分の考えを伝えたりするために理性を使っていると言えます。
ハーバーマスは、現代社会は道具的理性に偏りすぎており、そのことが社会問題を生む原因となっていると指摘しました。
そして、人々が対話的理性を取り戻すことで人間性が発揮され、社会を改善することができると主張しました。
生活世界の植民地化
「生活世界」とは私たちの日常生活のことで、「植民地化」とは侵略されることを言います。
ハーバーマスは、私たちの日常生活が道具的理性によって支配され、侵略されていると主張しました。
言い換えれば、現代では対話的理性によるコミュニケーションが疎かになり、社会の人間的な側面が損なわれているということになります。
身近な例としては、高校教育が大学入試に合格するための手段(=道具的理性)に偏ってしまい、クラスメイトとの関わりの中で人格を形成する観点(=対話的理性)が軽視されてしまっていることが挙げられます。
公共圏
「公共圏」とは、私的な利益を超えて、社会全体の問題を自由に議論できる場のことです。
ハーバーマスは、公共圏が健全であれば、社会全体の課題を解決するためのコミュニケーションが活性化し、社会を良くするための力が生まれると考えました。
公共圏の例として、人々が政治について自由な議論をするヨーロッパの広場や、現代社会でいうとSNSなどが挙げられます。
他の思想との関係
ハーバーマスは、同じくフランクフルト学派に属するテオドール・アドルノやマックス・ホルクハイマー、エーリッヒ・フロムといった哲学者の影響を受けています。
アドルノらは、科学技術の発展が人間社会に与える悪影響を考察し、人間が自ら自由を手放してしまうメカニズムを説明しました。
彼らは基本的には人間の理性については懐疑的なスタンスを取りました。
ハーバーマスも基本的には彼らの思想を受け継ぎましたが、理性を道具的理性と対話的理性に分けることによって、「理性」の価値の見直しを試みたと言えます。
実践!ハーバーマスの思想を現代社会で生かす方法
ハーバーマスの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
社会人サークルへの参加
ハーバーマスによれば、私たちは誰かと対話することで初めて理性を発揮することができます。
社会人になると、友人との予定を合わせるのが難しくなり、会社の同僚と家族以外の人と会う機会が急に少なくなります。
そこで、社会人サークルに参加して、趣味のつながりを作ってみてはいかがでしょうか。
インターネットの普及によって、現代ではかなりマニアックなサークルも存在するため、自分の好きな分野について語り合える集団がきっと見つかると思います。
サークルでの活動によって、他者を理解したり自分の意見を伝えたりする機会が増え、より人間らしく生きることができるかもしれませんよ。
ハーバーマスのおすすめ入門書
ハーバーマスの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
まとめ
このページでは、対話的理性、公共圏といったハーバーマスの思想を解説しました。
これらの概念を意識して生きることで、機械的に何かをする人生から脱却し、人間らしい日常を送ることができると思います。