ジークムント・フロイト(1856 - 1939)は、オーストリアの心理学者であり、その後の哲学に大きな影響を与た人物です。
このページでは、無意識、超自我、防衛機制といったフロイトの思想を分かりやすく解説します。
また、フロイトの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- フロイトの主な思想
- フロイトの思想を現代社会で生かす方法
- フロイトのおすすめ入門書
フロイトの時代背景
フロイトが活躍した時代は、科学と技術が急速に発展した19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパです。
しかし、当時は精神科学がまだ確立しておらず、心の問題は医学ではなく宗教の領域に委ねられていました。
そこでフロイトは、ヒステリーを始めとする心の病を科学的に理解しようと試みます。
そしてその結果、彼は「無意識」の存在を発見したのでした。
フロイトの主な思想
フロイトの主な思想を解説します。
無意識
「無意識」とは、人間が意識的に認識できない思考や欲求のことです。
フロイトは、人間の行動や思考の大部分が無意識から生じていると主張しました。
例えば、コンビニで何となくシュークリームを買ったとします。
この時、「シュークリームを買う」という行動を起こす前に、心の中の無意識の領域では様々なことが起きています。
具体的には、「甘いものが食べたい」という食欲、過去に見たCM、昨日同僚がシュークリームを食べていた光景、、、といった、無意識の領域に押し込められていた欲求や思考が、「シュークリームを手に取る」という行動につながっています。
フロイトによる無意識の発見は、人間が100%自分の意思で行動しているわけではないことを意味します。
このことは、人間の自由意志を重視する近代哲学に多大な影響を与えました。
イド、自我、超自我
フロイトは、人間の心は「イド、自我、超自我」の3つの部分に分けられ、それぞれが異なる役割を果たしていると主張しました。
イド(「エス」ともいう)
「イド」とは、心の中の原始的な欲望が存在する部分です。
例えば、食べ物が欲しい、眠りたいといった欲求がここから生じます。
自我
「自我」は、心の中で現実とイドの欲求を調和させる部分です。
例えば、お腹が空いていて、すぐには食べ物を手に入れられない時、自我は我慢することを選択します。
超自我
「超自我」とは、心の中で道徳的な規範を持つ部分です。
例えば、お腹が空いていて、目の前の人がおにぎりを食べていても、それを奪って食べることはしませんよね。
この時、私たちの心の中では、幼少期から教えられている「人の物を奪ってはならない」という規範が働いています。
意識・無意識とイド・自我・超自我の関係は、下の図のように表すことができます。
氷全体が個人の心を表しています。
この図から、意識は氷山の一角にすぎないということが分かります。
フロイトによれば、私たちが認識できている「意識」は、自我と超自我の一部だけであり、心の大部分は海の中(=無意識の領域)に埋まっています。
ちなみに「前意識」とは、無意識から意識に移動する際に、一時的に情報を保管しておく領域であり、注意すれば思い出せるレベルの情報が入っています。
フロイトは、人間が行動するまでに心の中では以下のようなことが起きていると考えました。
- 完全に無意識の中にある「イド」によって、欲望や衝動が起こる
- ほとんど無意識の中にある「超自我」によって、欲望が規律される
- 「自我」によって、欲望と規律のバランスを取り、実際の行動を起こす
防衛機制
「防衛機制」とは、受け入れたくない状況や危険な状況に晒された時に、不安を軽減しようとする無意識的な心の動きを言います。
例えば、小学生時代に運動会でバトンを落としてしまったことで、とても悔しい思いを味わったとします。
その記憶はつらい記憶であるため、心の無意識の領域に格納されます(このことを「抑圧」と言います)。
しかし、ふと同じようなシーンに出くわした時に、自分の心を守るために無意識が働いて、手が震えたり汗をかいたりすることで、「バトンリレーをする」という同じ行動をさせないように心が体をコントロールしようとするのです。
他の思想との関係
ユングとの関係
フロイトの弟子であったカール・ユングは、フロイトの「個人的無意識」に対し、「集合的無意識」という概念を提唱しました。
集合的無意識とは、人類全体が共有する象徴やイメージのことで、個人に焦点を当てたフロイトの理論とは異なる解釈を示しています。
その後の哲学への影響
フロイトの思想は、20世紀の哲学者や社会科学者に多大な影響を与えました。
特に、レヴィ=ストロースをはじめとする構造主義の思想家は、「私たちの思考や行動は、所属している社会や文化によって決められている」と主張しました。
実践!フロイトの思想を現代社会で生かす方法
フロイトの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
無意識を操る
フロイトによれば、人間を動かしているのは意識ではなく無意識の領域です。
つまり、何かを頑張ろうと意識しても、無意識がそれを拒否してしまえば、実際に行動に移すことはできません。
そこで、意識の力に頼るのではなく、無意識を操ることで、行動を変えていくことをおすすめします。
例えば、ダイエットをしたければ、お菓子をストックするのをやめ、毎回コンビニまで買いにいかなければならないようにします。
すると、心の無意識の部分に「お菓子を食べるのは面倒くさいことだ」という情報がインプットされ、結果としてお菓子を食べる頻度が減っていくでしょう。
フロイトのおすすめ入門書
フロイトの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
(おまけ)フロイトの面白エピソード
精神医学の分野では...
フロイトは無意識の発見により、哲学の世界に多大な影響を与えました。
その影響度合いは、同時代に活躍したマルクスやダーウィンに匹敵するとも言われることもあるくらいです。
しかし、彼の本業である精神医学の分野では、現代では必ずしも高い評価を得ているとは言えないようです。
ただし、フロイトの理論を継承した「精神分析学」という分野は、本流とは言えないものの、現代にも引き継がれています。
まとめ
このページでは、無意識、超自我、防衛機制といったフロイトの思想を解説しました。
特に、無意識の概念は私たちの人生に大きく関わる発見であり、覚えておいて損はないと思います。
最近の自己啓発本にもよく出てきますね。