クロード・レヴィ=ストロース(1908 - 2009)は、フランスの文化人類学者・哲学者です。
このページでは、レヴィ=ストロースの思想をわかりやすく解説します。
また、レヴィ=ストロースの思想を、現代に生きる私たちの人生に生かす方法を紹介します。
- レヴィ=ストロースの主な思想
- レヴィ=ストロースの思想を現代社会で生かす方法
- レヴィ=ストロースのおすすめ入門書
- レヴィ=ストロースの生涯と時代背景
- レヴィ=ストロースの主な思想
- 他の思想との関係
- 実践!レヴィ=ストロースの思想を現代社会で生かす方法
- 【おまけ】レヴィ=ストロースの面白エピソード
- レヴィ=ストロースのおすすめ入門書
- まとめ
レヴィ=ストロースの生涯と時代背景
レヴィ=ストロースは、第一次世界大戦と第二次世界大戦という2度の世界大戦を経験しています。
また、当時はヨーロッパにおける社会変革や科学の進歩が目覚ましく、ヨーロッパ世界とそれ以外の世界との格差がどんどん拡大していく時代でもありました。
レヴィ=ストロースはパリ大学で法学を学びましたが、後に人類学に転向しています。
彼はブラジルの先住民族との交流を通じて、文化の多様性と普遍性についての洞察を深めました。
この経験が、後の彼の思想の形成に大きな影響を与えました。
レヴィ=ストロースの主な思想
レヴィ=ストロースの主な思想を解説します。
構造主義
レヴィ=ストロースの主な思想の一つは構造主義です。
レヴィ=ストロースはブラジル先住民が暮らす地でのフィールドワークを通じて、言語や社会の「構造」が人間の思考や行動に与える影響を研究しました。
レヴィ=ストロースによれば、人間の思考や文化は特定の構造によって形成され、その構造は普遍的な法則に基づいている、というものです。
シンプルに言い換えると、私たちは自由に思考しているのではなく、ある「構造」の枠の中でしか思考できないということです。
野生の思考
レヴィ=ストロースは、人間の思考を「野生の思考」と呼びました。
自然界で生きる野生動物は生まれつき、生存や繁殖のためのさまざまな知恵を持っています。例えば、シマウマはライオンに出会ったら全速力で逃げる本能が生まれつき備わっています。レヴィ=ストロースによれば、そのような野生動物と同様に、私たち人間も、社会の中で直面する問題に対処するための知恵を駆使しながら生きています。
「野生の思考」は論理的な思考や直線的な思考ではなく、非論理的で連想的な思考です。野生では、敵がランダムに動いたり、天候が読めなかったりするため、その場の状況に応じて、直感的に行動しなければならないからです。
レヴィ=ストロースは、私たち人間も、社会で起きる複雑な問題に対して、単純なルールや概念だけでなく、直感や感情を駆使して解決策を見つけながら生きているのだと説明しました。そして、その直感や感情の元になるのが「構造」だということです。
文化の普遍性と多様性
レヴィ=ストロースは文化の普遍性を強調しました。彼は、さまざまな文化が異なる方法で世界を解釈し、異なる規範や価値観を持っていながらも、その背後には共通した思考のパターンが存在すると考えました。つまり、異文化同士でも、それらの背後にある思考には共通項があるということです。
一方で、彼は文化の多様性にも焦点を当てました。当時は西洋諸国が後発国を植民地化していた時代であり、西洋文明が他の文明よりも優れていることが当然と考えられていました。しかしレヴィ=ストロースは、この考えを「偏見に基づく誤解である」と主張します。そのうえで、文明同士の対話によって、お互いを補完する関係を築くことが重要だと述べています。
現代では常識となっているダイバーシティの重要性・有効性に、レヴィ=ストロースはいち早く気づいていたのですね。
他の思想との関係
レヴィ=ストロースの構造主義の思想は、ハイデガーやサルトルの実存主義を批判する形で展開されました。
実存主義では、私たち人間は「こう生きるべきである」という「本質」に縛られる事なく、個人として自由な人生を送ることを重視します。一方レヴィ=ストロースは、個人は完全に自由に思考することはできず、その人が生きている時代や社会の「構造」の枠の中でしか思考できないとして、実存主義を批判しました。
実践!レヴィ=ストロースの思想を現代社会で生かす方法
共通項を見つける
レヴィ=ストロースは異なる文化の間にある共通の構造を見出しました。文化に限らず、一見全く異なっている2つのものに共通項が見つかれば、それがイノベーションにつながることがあります。
例えば、鉛筆と消しゴムはそれぞれ「書く」と「消す」という相反する機能を持ちますが、どちらも「字を書く時に使う」という共通項があります。この共通項を利用したのが消しゴム付きの鉛筆であり、1つのアイテムで「書く」と「消す」の両方の機能を実現するというイノベーションが起きていると言えます。
複数の視点を持つ
レヴィ=ストロースは文化の相対性を強調し、単一の視点に固執することに疑問を投げかけました。
私たちは他者の視点や経験に耳を傾け、多様な視点を持つことで、より包括的な理解や解決策を見つけることができます。敢えて自分とは程遠い考え方の人と交流することで、お互いに新しい視点が備わるかもしれませんね。
【おまけ】レヴィ=ストロースの面白エピソード
日本との関わり
レヴィ=ストロースは親日家として知られています。彼は幼い頃から浮世絵などの日本芸術に触れており、何度か訪日もしています。確かに、非論理的な思考に注目したり、西洋以外の文化に価値を見出そうとするスタンスは、何となく日本人の感覚と似たところがありますね。
レヴィ=ストロースのおすすめ入門書
レヴィ=ストロースの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事では、クロード・レヴィ=ストロースの思想について解説しました。彼の哲学は、異なる文化や社会の理解を深める上で重要な示唆を与えてくれますし、私たち日本人の感覚とも似たところがあります。