わかりやすく解説!実存主義と構造主義 | 特徴や代表的な哲学者を紹介

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実存主義と構造主義は、それぞれ現代哲学の代表的な理論です。

この記事では、実存主義と構造主義の特徴について、わかりやすく解説します。

また、実存主義と構造主義の代表的な哲学者を紹介します。

  • 実存主義はどんな思想か
  • 構造主義はどんな思想か
  • 実存主義と構造主義の代表的な哲学者
  • 実存主義と構造主義の違い

実存主義とは

実存主義とは、私たち一人ひとりの存在に焦点を当てた思想です。

それまでの哲学では、「善とは何か」とか「どうすれば真実が見えるのか」といった「普遍的なもの(=本質)」を追求してきました。

しかし、仮に本質を理解できたとしても、個人の人生が幸せになるとは限りません。

例えば、あなたが進路について悩んでいた時に、「目には見えないイデアという世界があり、私たちが見ているこの世界はイデアのコピーにすぎない」ということが分かったとしても、進路を選ぶヒントにはなりませんよね。

実存主義は普遍的なものよりも、個人として人生をどのように生きるのかを追求する哲学です。

実存主義の主な哲学者

セーレン・キルケゴール

キルケゴール

セーレン・キルケゴール(1813 - 1855)

キルケゴールは、誰から見ても正しい客観的な事実ではなく、自分にとっての主体的真理を追究することが重要であると主張し、実存主義の先駆けとなりました。

キルケゴールは、個人が主体性を得るためには、「美学的実存」「倫理的実存」「宗教的実存」の三段階を経る必要があると主張しました。

フリードリヒ・ニーチェ

ニーチェ

フリードリヒ・ニーチェ(1844 - 1990)

ニーチェは、自分の不満や欠点を直視することなく、他者や外部の状況を責める心情を「ルサンチマン」と呼びました。

そして、ルサンチマンを克服し、自分の価値を自分で創造していくことによって、真の自由を獲得できるのだと主張しました。

マルティン・ハイデガー

ハイデガーの写真

マルティン・ハイデガー(1889 - 1976)
Willy Pragher, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons

ハイデガーは、人間は他の動物や物体とは異なり、決断によって自分の存在の在り方を自由に選択できる唯一の存在(=現存在)であると主張しました。

ハイデガーによれば、人間はこの世界に何の目的もない状態で生まれ、ただ「死」に向かって進む存在にすぎません。

しかし、「死」を直視した人間は、自分の人生を選択し、決断していくことができるのだとハイデガーは主張しました。

ジャン=ポール・サルトル

サルトル

ジャン=ポール・サルトル(1905 - 1980)
Moshe Milner, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

サルトルは、「実存は本質に先立つ」という名言を残しました。

「実存」とは、私たちが「こう生きたい」と思う生き方のことで、「本質」とは「人はこう生きるべき」という一般的な考え方です。

サルトルによれば、私たちは生まれた時点で「こう生きるべき」という本質を持っているのではなく、自分の意志や選択に基づいてアイデンティティを作ることができます

構造主義とは

構造主義とは、私たちの思考や行動は、所属している社会や文化によって決められているという考え方です。

構造主義の哲学者たちは、私たちが自分の意思でやっていることでも、実は何かしらの「構造」の影響を受けているのだと主張します。

構造主義の主な哲学者

フェルディナン・ド・ソシュール

ソシュール

フェルディナン・ド・ソシュール(1857 - 1913)

ソシュールは言語の分析を通じて、言語が特定の意味とあらかじめセットになっているのではなく、それぞれのコミュニティ(言語圏)の考え方の違いによって、別々の発展をしてきたと主張しました。

つまり、私たちの発想は、所属しているコミュニティの影響を受けているということになります。

この発見が、後の構造主義に大きな影響を与えました。

クロード・レヴィ=ストロース

レヴィ=ストロース

クロード・レヴィ=ストロース(1908 - 2009)
UNESCO/Michel Ravassard, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

レヴィ=ストロースは、ブラジル先住民が暮らす地でのフィールドワークを通じて、言語や社会の「構造」が人間の思考や行動に与える影響を研究しました。

レヴィ=ストロースはその研究を元に、人間の思考や文化は特定の構造によって形成され、その構造は普遍的な法則に基づいているのだと主張しました。

ミシェル・フーコー

フーコー

ミシェル・フーコー(1926 - 1984)

フーコーは、監獄の研究を通じて、監獄制度が単に人々を罰するだけではなく、人々を規律化する機能を持っていると分析しました。

そして規律化の機能は、監獄そのものを超えて、学校、病院、工場など、私たちの日常生活の場でも、監視と規律化のメカニズムを作っていると主張しました。

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実存主義と構造主義の違い

さて、実存主義と構造主義の違いは何でしょうか。

実存主義の根幹にある価値観は、「人間は自由であり、自分の意志で生きていける」という考え方です。

一方で、構造主義の根幹には「人間は自分の意志で生きているつもりでも、無意識のうちに社会や時代の考え方に縛られて生きている」という価値観があります。

例えば、田舎での暮らしが嫌になった若者をイメージしてください。

実存主義者は、この若者が1人で上京し、都会で自分の道を切り開き、力強く生きていく姿を描きます。(あるいは、応援してくれます。)

一方で、構造主義者は、村のみんなの圧力や、その若者自身の中にある、競争を好まない性格などによって、結局上京しない姿を描きます。

実存主義・構造主義のおすすめ入門書

実存主義と構造主義の思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。

 

 

 

まとめ

この記事では、実存主義と構造主義の概要と代表的な哲学者を紹介しました。

実存主義と構造主義の主張の分かれ目は、「人は自由かどうか」という点です。

一口に「○○主義」といっても、それぞれの哲学者が独自の思想を展開しているので、その微妙な違いを見つけながら読むのも面白いと思います。