ヘルベルト・マルクーゼ(1898 - 1979)は、ドイツのフランクフルト学派の哲学者です。
このページでは、「一次元的人間」を中心とするマルクーゼの思想を分かりやすく解説します。
また、マルクーゼの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- マルクーゼの主な思想
- マルクーゼの思想を現代社会で生かす方法
- マルクーゼのおすすめ入門書
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マルクーゼの時代背景
マルクーゼは、第二次世界大戦下のドイツで育ち、ナチスによるユダヤ人迫害の時代を経験しました。
彼はフランクフルト学派の一員として、理性的であるはずの人間がなぜそのような惨劇を生み出してしまったのか、また、今後同じ惨劇を繰り返さないためにはどうすればよいか、という問いに向き合いました。
マルクーゼの主な思想
マルクーゼの主な思想を解説します。
一次元的人間
「一次元的人間」とは、自分自身の欲望や価値観を批判的に問い直す能力を失った人間のことです。
現代社会では、広告、メディア、教育、政治といった社会的な要素によって、人々が一次元的人間になってしまったとマルクーゼは主張します。
一次元的人間となった人々は、社会が提示する準備された選択肢の中から何かを選ぶだけで、その選択が自分たちの本当の欲望を満たしていると錯覚しています。
例えば洋服を買いに行く時、「こんな洋服が欲しいな」と考えながらショップを周り、そこで売っている商品の中から買うものを選びます。
この時、私たちは自分の自由な意思で洋服を選んでいるようにみえますが、実際には提示された選択肢の中から洋服を選んでいるに過ぎません。
さらに言えば、最初に思い浮かべた「こんな洋服が欲しいな」というイメージも、テレビやインスタを見て抱いたものであり、自由な発想から生まれたイメージではないかもしれません。
このように、現代社会の人々は、自分の選択を自分以外の要因に委ねているという点で、自由を失っています。
マルクーゼは、一次元的人間を多く生み出す社会が、人間の真の自由や民主主義、批判的思考を脅かすと主張しました。
一次元的人間にならないためには
マルクーゼは、このような一次元的人間の増加に対抗するためには、個々人が自己の欲望や価値観を批判的に見直し、社会的な圧力に屈せず自分自身の生を生きる勇気を持つことが必要だと主張しました。
言い換えれば、常に自分の意思で判断することを心がけ、社会を批判的に見ることが必要だということになります。
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他の思想との関係
マルクーゼの思想は、同じくフランクフルト学派のアドルノやホルクハイマー、フロムなどの影響を受けています。
アドルノは、大衆文化が産業化したことによって、人々が個性を失って画一化され、従順な労働者になってしまうと警告しました。
また、ホルクハイマーは社会や文化を批判的に分析し、変革を促すための批判理論を提唱しました。
さらに、批判を重視するマルクーゼの思想は、日本の新左翼の学生運動にも影響を与えました。
実践!マルクーゼの思想を現代社会で生かす方法
マルクーゼの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
ニュースを批判的に読む
マルクーゼは、私たちが一次元的人間にならないためには、批判的に生きることが重要であると考えました。
私たちの日常生活でも、批判的なスタンスが有効になるシーンがよくあります。
例えば、ニュースで「日本の人口が△万人減少!」と言っていたとします。
この情報を無批判に受け入れてしまうと、「えー、それは大変だ」と考えがちです。
しかし、批判的なスタンスを持っていれば、「去年の減少数と比べたら?」とか、「減少率は?」とか、「同じくらいのGDPの国ではどうなの?」とか、「そもそも人口減少のどこが問題なの?」…といった疑問が湧くはずです。
それらの疑問を自分で調べることによって、ニュースに対して自分自身の主張が持てるようになるでしょう。
マルクーゼのおすすめ入門書
マルクーゼの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
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まとめ
このページでは、マルクーゼの「一次元的人間」について解説しました。
マルクーゼを始めとするフランクフルト学派は、当時のナチスドイツを想定していますが、彼らの理論は、現代の日本でも通用するのではないでしょうか。