トマス・アクィナス(1225 - 1274)は、中世ヨーロッパを代表する哲学者・神学者です。
このページでは、トマス・アクィナスの思想を分かりやすく解説します。
また、トマス・アクィナスの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- トマス・アクィナスの思想
- トマス・アクィナスの思想を現代社会で生かす方法
- トマス・アクィナスのおすすめ入門書
トマス・アクィナスの生涯と時代背景
トマス・アクィナスは、イタリアのアクィノ伯爵家という名家の出身で、幼い頃から修道院で修行を積んでいました。
トマス・アクィナスは、アリストテレス哲学とキリスト教神学の融合を試み、スコラ学(中世のキリスト教神学)の最高峰を築いたとされています。
彼が生きた時代は、十字軍遠征や異教徒との交流により、ギリシャ哲学やイスラム哲学がヨーロッパに伝わり、キリスト教と異文化の対話が進む時代でした。
トマス・アクィナスは、この時代背景を受けて、異文化の知恵を取り入れ、キリスト教の教義をより深めることに貢献しました。
トマス・アクィナスの主な思想
五つの道
トマス・アクィナスは、自然界や人間の理性を通じて、神の存在を証明しようと試みました。
つまり、哲学的な思考によって、神が存在することを説明したということです。
彼が提唱する「五つの道」は、神の存在証明として有名です。
以下にそれぞれの道を詳しく解説します。
運動の原因
世界には運動(=変化)が存在し、全ての運動には原因があると考えられます。
しかし、無限に原因が遡れないため、最初の運動の原因として神が存在すると主張します。
効果の原因
あらゆるものは何らかの原因から生じます。
しかし、原因と効果の連鎖は無限に続かず、最初の原因が存在しなければ何も生じないと考えられます。
トマス・アクィナスは、その最初の原因こそ、神であると主張します。
存在の必然性
現実世界には、存在することもしないこともあり得る偶発的な存在が多くあります。
しかし、すべてが偶発的な存在だと、何も存在しない空白の瞬間があるはずです。
そのような状況を回避し、「存在することが必然的である存在(=神)」がいると主張します。
最善の原因
自然界には程度の差があり、善悪や美醜などの評価がされます。
最高の善や完全さを持つ基準として、神が存在すると主張します。
目的の原因
自然界には目的を持って機能するものが多く存在します。
例えば、植物は太陽の光を吸収するという目的を果たすために、葉っぱが広がるように設計されています。
しかし、無意識なものは、目的を持って機能することができません。
それゆえ、目的を持ってすべてのものを導く存在(神)が存在することになります。
これらの五つの道は、観察や理性を用いて、神の存在を論理的に導き出す方法であり、哲学者や神学者たちの間で広く議論されてきました。
実在論
トマス・アクィナスは、「実在論」という哲学的立場を取りました。
実在論とは、一般的な概念や普遍的な真理が、現実世界に実在するとする立場です。
彼は、神が創造した世界において、物事は普遍的な真理に基づいて存在していると考えました。
この姿勢は、その後長い間キリスト教の正統派となるローマ教会に引き継がれることとなりました。
自然法
彼は、人間が持つ理性を通じて、神が創造した世界の道徳的法則(=自然法)を理解できると主張しました。
自然法は、人間の本性や社会の秩序に根ざした普遍的な道徳原則であり、キリスト教の教えとも一致すると考えました。
これにより、異文化間の道徳的な共通基盤を示すことができると主張しました。
この自然法の考え方は、今日の法学の諸学説に色濃く反映されています。
実践!トマス・アクィナスの思想を現代社会で生かす方法
トマス・アクィナスの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
異文化間の対話
異文化間の道徳的な共通基盤を見出すことで、互いの違いを尊重し、対話を深めることができます。
これは、現代の多文化社会において必須のスキルと言えます。
倫理的な意思決定
自然法や道徳原則を基に、個人や企業が倫理的な意思決定を行うことができます。
特に、環境問題や人権問題など、普遍的な価値に関わる課題に対処する際に役立ちます。
科学技術と価値観の調和
科学技術の進歩が目まぐるしい現代ですが、これまで人々が大切にしてきた価値観(道徳や信仰)の中には、必ずしも科学的・論理的とは言えないものも多くあります。
これら科学技術と価値観をどのように調和させるのかというところに、トマス・アクィナスの姿勢が参考になるかもしれません。
トマス・アクィナスのおすすめ入門書
トマス・アクィナスの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
(おまけ)誘惑に屈しない男
トマス・アクィナスは若い頃からあまりにも信仰に熱心であったため、心配した家族は彼が修行している修道院に美女を送り込んで誘惑させました。
しかし、トマス・アクィナスは、信仰心の強さからその誘惑に全く動じず、部屋にあった火かき棒で美女を追い払いったと言われています。
このエピソードは、彼の信仰心や決断力を象徴するものであり、後の彼の哲学・神学に対する情熱を表しています。
トマス・アクィナスもカッコいいですが、両親もなかなか大胆ですね。。
まとめ
トマス・アクィナスは、哲学とキリスト教神学の融合を試みました。
彼の思想は、「五つの道」、「実在論」、「自然法」など、多くの重要な概念を生み出しました。
現代社会でも、彼の思想は異文化間の対話や倫理的な意思決定、信仰と理性の調和に関連する示唆を与えてくれます。