ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1889 - 1951)は、オーストリア出身の哲学者です。
この記事では、「写像理論」「言語ゲーム」といった、ウィトゲンシュタインの思想をわかりやすく解説します。
- ウィトゲンシュタインの主な思想
- ウィトゲンシュタインの思想を現代社会で生かす方法
- ウィトゲンシュタインのおすすめ入門書
- ウィトゲンシュタインの生涯と時代背景
- ウィトゲンシュタインの主な思想
- 他の思想との関係
- 実践!ウィトゲンシュタインの思想を現代社会で生かす方法
- ウィトゲンシュタインのおすすめ入門書
- (おまけ)ウィトゲンシュタインの面白エピソード
- まとめ
ウィトゲンシュタインの生涯と時代背景
ウィトゲンシュタインはウィーンの裕福な家庭に生まれ、幼少期から音楽と数学の教育を受けました。
そして、ケンブリッジ大学に進学し、哲学者・数学者であるバートランド・ラッセルの下で哲学を学びました。
その後、第一次世界大戦でオーストリア軍に従軍した後に哲学に復帰し、20世紀を代表する哲学書である『論理哲学論考』を出版しました。
ウィトゲンシュタインの主な思想
ウィトゲンシュタインは前期の主著『論理哲学論考』の中で、世界と言語の関係について考察し、「写像理論」という考え方を主張します。
しかしその後、後期の主著『哲学探究』では自身のこれまでの考え方を一部否定し、「言語ゲーム」という新たな概念を主張しました。
写像理論
「写像理論」とは、世界と言語の間に対応関係が成り立っているという考え方です。
写像理論を理解するためのキーワードは、「論理空間」です。
論理空間
「論理空間」とは、すべての「起こりうること」が集まった言語の集合のことです。
たとえば今、部屋のイスに猫が座っているとします。
このとき、以下の①~③の言語について考えてみましょう。
- 猫がイスに座っている
- 猫が机に座っている
- 猫がイスに座っているが、イスには何も座っていない
①は実際に起きていることなので「起こりうる」と言えます。また、②は実際には起きていないことですが、明日は猫が机に座っているかもしれないので「起こりうる」と言えます。
しかし、③は論理的に考えて絶対に起こらないことです。
つまり、①と②が論理空間に含まれ、③は含まれないということになります。
ちなみに、「神は存在する」という状況については、実際に起きたかどうかを確認することができないため、論理空間には含まれません。
世界と言語は1対1の対応関係
ウィトゲンシュタインによれば、「世界」は、論理空間にある言語のうち、「実際に起きていること」と1対1で対応しています。
たとえば、「猫がイス座っている」という世界の状況は、「猫がイスに座っている」という言語で言い表すことができ、世界の状況と言語が1対1の対応関係になっています。
ウィトゲンシュタインは、たとえ言語で言い表せているように見えても、論理空間の外にあることについては真偽を判定することができないため、「沈黙しなければならない 」と主張しました。
言語ゲーム
「言語ゲーム」とは、言語の意味はその言語が使われる場面や使われ方によって決まるという考え方です。
たとえば、次の2つの文を比べてみてください。
- 朝食はパンではなく「ごはん」派だ
- これから友達と「ごはん」を食べに行く
①の「ごはん」はお米を炊いたものを指しますが、②の「ごはん」はお米とは限らず、パンやパスタも含めた「食事」という意味になります。
「ごはん」という言語には2つの意味がありますが、パンと比較される時には①の意味、「行く」という言葉と組み合わせると②の意味、というように、私たちはある一定のルールに応じてどちらの意味の「ごはん」なのかを無意識に判断しています。
このように、言語の意味が一定のルールの中で確定されることをウィトゲンシュタインは「言語ゲーム」と呼びました。
私的言語の不可能性
「私的言語」とは、一人の個人だけが理解できるような、完全にプライベートな言語のことです。
たとえば、今の私の心の状態を1単語で完全に表現できる「√*%=」という単語を生み出すことはできるでしょうか。
ウィトゲンシュタインは、そのような私的言語は存在できないと主張しました。
なぜなら、言語の意味はその言語が使われる場面や状況に応じて決まるからです。
つまり、私的言語を作ったとしても、それを他者に伝える場面がないため、その言語の意味を確定させることができないのです。
他の思想との関係
ウィトゲンシュタインは大学で哲学を学ぶ前に、ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』を精読していたと言われています。
また、ウィトゲンシュタインの言語ゲームの考え方は、「独我論」について考察するうえで参考になります。
「独我論」とは、自分の意識だけが現実であり、世界や他者はすべて自分の意識が作り出したものである、という考え方です。
実践!ウィトゲンシュタインの思想を現代社会で生かす方法
ウィトゲンシュタインの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
概念と言語を対応させる
同じ言語で話していても、自分の頭の中をそのまま相手に伝えることはとても難しいです。
前提知識が異なる人とのコミュニケーションでは、お互いの言語がどのような概念を指しているのかを常に確認しながら話すことで、相互の誤解を防ぐことができるでしょう。
ウィトゲンシュタインのおすすめ入門書
(おまけ)ウィトゲンシュタインの面白エピソード
『論理哲学論考』出版後の人生
ウィトゲンシュタインは32歳のときに主著『論理哲学論考』を出版しました。
『論理哲学論考』では「哲学の諸問題は全て解決された」というスタンスがとられており、実際にウィトゲンシュタインはその後哲学の世界から身を引き、小学校教師としての人生を送ります。
しかし、40歳を越えて再び学問の世界に戻り、もう一つの主著『哲学探究』を出版し、こちらも現代に至るまで読み継がれる名作となりました。
本当に才能豊かな方だったのですね。
まとめ
この記事では、「写像理論」「言語ゲーム」といったウィトゲンシュタインの思想をわかりやすく解説しました。
ウィトゲンシュタインは世界と言語の関係を分析し、私たちがゲームをするかのように言語を使っているのだと主張しました。
ウィトゲンシュタインの哲学は難解であると言われていますが、この記事を読んで少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。