アルトゥール・ショーペンハウアー(1788 - 1860)は、近代ドイツの哲学者です。
このページでは、「意志と表象としての世界」をはじめとするショーペンハウアーの思想を分かりやすく解説します。
また、ショーペンハウアーの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
- ショーペンハウアーの主な思想
- ショーペンハウアーの思想を現代社会で生かす方法
- ショーペンハウアーのおすすめ入門書
- ショーペンハウアーの生涯と時代背景
- ショーペンハウアーの主な思想
- 他の思想との関係
- 実践!ショーペンハウアーの思想を現代社会で生かす方法
- ショーペンハウアーのおすすめ入門書
- (おまけ)ショーペンハウアーの面白エピソード
- まとめ
ショーペンハウアーの生涯と時代背景
ショーペンハウアーは19世紀初頭のドイツを舞台に活動しました。
彼が生きた時代のヨーロッパは、ナポレオンによる革命が挫折し、その後のウィーン体制へと移行する時代でした。
ウィーン体制の下では、フランス革命以前の状態を理想とし、自由主義やナショナリズムといった民衆の運動が抑圧されていました。
ショーペンハウアーは裕福な商人の家に生まれ、幼少期から各地を旅して幅広い知識を得ましたが、父親の死をきっかけに学問の道を志すようになります。
大学ではプラトン哲学やカント哲学を学び、大学卒業後は古代インド哲学に触れます。
これらの哲学がショーペンハウアーの思想形成に影響を与えたと思われます。
ショーペンハウアーの主な思想
ショーペンハウアーの主な思想を解説します。
ショーペンハウアーの思想は、「世界は意志と表象である」という概念に集約されます。
つまり、私たちが知覚する世界は全て個々人の意識の中で形成された表象であり、その背後には絶えず働く「意志」が存在するとショーペンハウアーは考えました。
盲目的な意志
「盲目的な意志」とは、私たちの全ての行動の背後にある目に見えない欲望のことを言います。
ショーペンハウアーは、私たちが食事をしたり、本を読んだり、息をしたりする背後には、生存本能に基づく欲望が常に働いていると考えました。
そして、もし1つの欲望を実現できたとしても、次の新たな欲望が生まれてしまうため、私たちは人間として生きる以上、絶えず「盲目的な意志」に囚われてしまうということになります。
ショーペンハウアーは、世界とは欲望同士がぶつかり合う場であり、人生とは常に何かの欲望に駆り立てられる、むなしいものであると考えます。
意志と表象としての世界
ショーペンハウアーは、「世界は意志と表象である」と主張しました。
「意志」は上で紹介した「盲目的な意志」を指します。
また、「表象」とは、私たちが認識できるもの、つまり知覚や思考を指します。
例えば、私たちが目の前の木を見ている時、その形や葉っぱの色といった要素は、全て私たちが「理性」というフィルターを通して頭の中で描いているイメージ図にすぎません。
このイメージが「表象」です。
しかし一方で、その木は私たちのイメージとは関係なく、生存本能である「意志」によって存在しています。
また、その木を観察している私たち自身も「意志」によって動かされています。
つまり、私たちにとっての世界というのは、欲望によって動かされる「意志」を、同じく欲望によって動かされている私たちが、その理性を通して描く「表象」なのである、というのがショーペンハウアーの考え方です。
厭世主義(ペシミズム)
ショーペンハウアーの思想は、「厭世主義」と評価されています。
「厭世主義」とは、世界や人生を悲観的にとらえる考え方です。
ショーペンハウアーは、「この世界は、考えられる限り最悪な世界である」と言いました。
そしてこの最悪な世界から救われるためには、人生が苦であるという事実と向き合い、欲望を捨てる必要があると主張しました。
他の思想との関係
ショーペンハウアーの思想は、イマヌエル・カントの哲学に深く影響を受けています。
カントは、人間には認識できない「物自体」という世界があり、私たちは理性というフィルターを通して物事を認識していると主張しました。
カントの思想については下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
また、厭世主義の思想は古代インド哲学や仏教の思想から影響を受けていると思われます。
さらに、ショーペンハウアーの思想はフリードリヒ・ニーチェやフロイトに影響を与え、20世紀の思想界に大きな足跡を残しました。
特にニーチェの思想における「力への意志」の発想は、ショーペンハウアーの「盲目的な意志」から影響を受けていると思われます。
ニーチェの思想については下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
実践!ショーペンハウアーの思想を現代社会で生かす方法
ショーペンハウアーの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
割り切る
友達から裏切られたり、仕事で怒られたり、大切な人を失ったりと、生きていれば悲しいことはたくさん起こります。
しかし、ショーペンハウアーによれば、そもそも人生とは苦しいものです。
何か悲しい出来事が起きた時は、彼の思想を思い出し、「まあ、人生は苦しいものだしな」と割り切って、気持ちを入れ替えてみてはいかがでしょうか。
自分の「確信」を過信しない
ショーペンハウアーの「意志と表象としての世界」では、私たちが認識できない「意志」と、認識可能な「表象」の両面から世界をとらえています。
私たちが「100%間違いない」と考えていることも、自分がどうやっても認識できない世界を、認識というフィルターを通して見ているだけかもしれません。
このフィルターには頑張れば外せるものと、どうやっても外せないものがあります。
そしてそのフィルターによって、真実を見誤ってしまうこともあると思います。
そこで、自分には外せないフィルターがついていることを自覚することで、確信を過信しないという習慣をつけてみてはいかがでしょうか。
ショーペンハウアーのおすすめ入門書
ショーペンハウアーの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
(おまけ)ショーペンハウアーの面白エピソード
プードルとお散歩
ショーペンハウアーはプードルを愛しており、一緒に散歩をするのが日課だったと言われています。怖そうな見た目とは裏腹に、なかなかお茶目な一面ですね。
ちなみに、彼は歴代のプードルに「アートマン」という名前を付けていたとも言われています。
アートマンとは、様々な解釈をもつ古代インド哲学の用語です。
彼がヨーロッパの思想だけではなく、古代インド哲学からも強い影響を受けていたことを示すエピソードですね。
まとめ
ショーペンハウアーの哲学は深淵で難解です。
しかし、彼の「世界は意志と表象である」という考え方を理解することで、日常生活での問題を解決する新たな視点を提供してくれるでしょう。
ショーペンハウアーの思想を探求し、自分の人生を豊かにするための一歩にしてみてはいかがでしょうか。