「メアリーの部屋」とは、オーストラリアの哲学者フランク・ジャクソンが提唱した思考実験です。
この記事では、「メアリーの部屋」についてわかりやすく解説します。
また、現代に生きる私たちが「メアリーの部屋」から学べることを紹介します。
- 「メアリーの部屋」がどのような思考実験か
- 「メアリーの部屋」は何を伝えたいのか
- 「メアリーの部屋」から私たちが学べること
「メアリーの部屋」とは?
メアリーは生まれた時から「色がない部屋」で育ちました。
その部屋はすべてがモノクロで、色がついた物は存在しません。
そのため、メアリーは生まれてから一度も「色」というものを見た事がありません。
メアリーはその部屋の中で、「色」に関するありとあらゆる知識を身につけます。
例えば、「リンゴは赤色でトマトと同じ色」「同じ赤色でも濃淡が微妙に違うものがある」「赤い物を見た時、人間の脳は○○という反応をする」...などなど。
さて、ここで問題です。
すべての知識をインプットしたメアリーが部屋から出た時、メアリーは何か新しいことを知るでしょうか。
それとも、勉強したとおりなので特に何も感じないでしょうか。
「メアリーの部屋」は何を伝えたいのか
「メアリーの部屋」の思考実験を読み解くためには、「物理主義」と「クオリア」という2つの概念を考える必要があります。
物理主義
「物理主義」とは、この世界の全てが物理的であるという考え方です。
物理主義によれば、机や本だけではなく、心や雰囲気など一般的には物理的ではないと考えられているものも、全てが物理的であるという主張です。
「メアリーの部屋」を提唱した哲学者フランク・ジャクソンは、メアリーが外に出た時、何か新しい感動を得るはずであり、その感動は物理的ではないため、客観的な知識ではないはずだと主張します。
この主張は、物理主義を否定する考え方であると言えます。
クオリア
「クオリア」とは、個人の主観的な経験のことを言います。
例えば、ある人にとってチョコレートは甘くて美味しいものですが、別の人には甘すぎて美味しくないと感じることがあります。
「メアリーの部屋」は、このクオリアを知識として論理的に学ぶことができるかを考察していると言えます。
「メアリーの部屋」から私たちが学べること
「メアリーの部屋」から私たちが学べることは何でしょうか。
それは、個人の主観的な経験や感覚を大事にするということだと思います。
もしメアリーが外に出た時に、これまで得た知識とは別の、驚きや感動を得られるとすると、客観的で論理的な科学とは別の、個人の主観の世界があるということになります。
現代では科学やSNSの発達によって、客観的に正しいかどうかやみんなが良いと思っているかということが判断材料になりがちです。
しかし、科学的ではなくても自分が信じたいこと、世間の評判は悪いけれど自分は良いと思うものも大切にしていくべきではないでしょうか。
ちなみに、デンマークの哲学者セーレン・キルケゴールは、自分がそのために生き、そのために死ぬことができるような主観的な理想(=主体的真理)を重視しました。
「メアリーの部屋」のおすすめ書籍
まとめ
この記事では、「メアリーの部屋」についてわかりやすく解説しました。
「メアリーの部屋」は、色に関するすべての知識を得たメアリーが、初めて色を見た時にどのような反応をするかという思考実験です。
私たちは「メアリーの部屋」の思考実験から、主観的な経験や感覚を大切にすることを学ぶことができるでしょう。