ベンサムの思想をわかりやすく解説!功利主義とは?

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ジェレミー・ベンサム(1748 - 1832)は、イギリスの哲学者です。
このページでは、功利主義として知られるベンサムの思想を分かりやすく解説します。
また、ベンサムの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。

  • ベンサムの主な思想
  • ベンサムの思想を現代社会で生かす方法
  • ベンサムのおすすめ入門書

ベンサムの生涯と時代背景

ベンサムはイギリスの富裕な家庭に生まれ、幼少期からラテン語を習得する神童でした。父親は弁護士で、ベンサムを自らの跡継ぎとして高度な教育を受けさせました。

ベンサムは12歳で大学に入り、10代のうちに大学院も修了しています。その後も法曹養成学校に入り、法律家としてのキャリアを順調に築いていきました。

しかし、当時のイギリス法典の複雑さに不満を抱いたベンサムは、法律を使う側ではなく、法律を作る側に回ることを決意し、法や社会の改革提案を行いました。

ベンサムの主な思想

ジェレミー・ベンサムの肖像画

ベンサムの主な思想を解説します。

功利主義

ベンサムの思想の根底にあるのが「功利主義」です。

功利主義とは、行動の善悪をその行動がもたらす幸福の大小で判断する考え方です。

例えば、町に公園を作ることを検討しているとします。

公園を作ることで、子どもたちの遊び場が増えたり、人びとの交流の場所ができたりすることで、町全体の絆が強まるなど、人々に多くの「幸福」が生まれます。

一方で、公園を作るためには費用がかかります。この費用は税金で賄うこととなり、人によっては自分の収入が減ったり、他の公共サービスが受けられなくなるといった「不幸」も生まれます。

ベンサムはこれらの「幸福」と「不幸」をそれぞれ集計し、より「幸福」が多く、「不幸」が少ない選択が正しいと考えました。

最大多数の最大幸福

「最大多数の最大幸福」とは、最も多くの人々が最大の幸福を得られる行動や決定をするべきという考え方です。

例えば、5人家族のうち3人はカレーが好きで、2人はシチューが好きだとします。

この場合、正しい夕飯の選択はカレーということになります。

しかし、シチュー好きの2人のうち1人はカレーが大嫌いだった場合は、その人の幸福度はかなり下がります。

そんな時は、シチューを選んだ方が5人の幸せの総量は多くなるはずです。

ベンサムは最大多数の最大幸福の原理に基づき、法律や政策を決めるべきであると主張しました。

他の思想との関係

ベンサムは、「みんながよく考えれば心から納得できること(=理性)」ではなく、「個人個人の幸福度(=感情)を合計する」という考え方をしました。

この考え方は、イギリス経験主義思想の影響を受けていたと思われます。

経験主義の代表的な思想家であるデイヴィッド・ヒュームは、道徳は理性ではなく、感情に基づくものである、と主張しました。

ヒュームの思想については、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

tetsugaku-chan.com

 

また、ベンサムの思想は、その後のジョン・スチュアート・ミルに大きな影響を与えました。

ミルの思想は、その後の自由主義、民主主義、人権といった現代社会の基盤を形成する重要な要素につながっていきます。

ミルの思想については、下記の記事で詳しく解説しています。

 

tetsugaku-chan.com

実践!ベンサムの思想を現代社会で生かす方法

ベンサムの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。

みんなの幸せを整理する

家族や友人の中で、自分の幸福と周囲の幸福がトレードオフ(自分の幸福を取ると、相手が不幸になってしまう状況)になってしまうことがあります。

そんな時は、選択肢ごとに誰がどのような感情になるのかを表にまとめてみることをお勧めします。

表に整理することで、自分が希望していた選択肢が自分だけを幸福にする一方で、別の選択肢を取れば、全員が「まあまあ幸福」になれる、なんてことに気付けることがあります。

ベンサムのおすすめ入門書

ベンサムの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。

 

(おまけ)ベンサムの面白エピソード

自分の標本を大学に飾る

ベンサムの自己標本
Philip Stevens, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia

ベンサムは自分の死後、その体を標本にして大学に寄贈することを求めました。

その標本は、現在もロンドン大学カレッジに展示されています(頭の部分はレプリカだそうです)。

造語メーカー

ベンサムは自身の思想を正確に表現するために、独自の造語を多用したことで有名です。

それらの造語の中には、現代では当たり前のように使われているものもあります。

例えば、「maximize(最大化する)」「minimize(最小化する)」「international(国際的な)」などはベンサムによる造語です。

ベンサムの価値観は、単語レベルでも現代社会に引き継がれているのですね。

まとめ

このページでは、功利主義、最大多数の最大幸福といったベンサムの思想を解説しました。功利主義思想は少数派の意見を反映できないなどのデメリットも指摘されることがありますが、現代の法制度に色濃く影響を及ぼしている考え方です。

功利主義を学ぶことは、法学や政治学の理解にも役立つことと思います。