マルクスの思想をわかりやすく解説!史的唯物論、疎外とは?

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タイトル画像(マルクス)

カール・マルクス(1818 - 1883)は、ドイツの哲学者・経済学者です。

この記事では、「疎外」「史的唯物論」といったマルクスの思想をわかりやすく解説します。

  • マルクスの主な思想
  • マルクスの思想を現代社会で生かす方法
  • マルクスのおすすめ入門書

マルクスの生涯と時代背景

マルクスは19世紀初頭、ドイツの小都市トリーアで生まれました。

当時はヨーロッパ全体が産業革命の真っただ中で、工場などで働く労働者が過酷な労働環境と生活苦に苦しんでいました。

一方で、工場などの資本を所有している「資本家」たちは、どんどん富を蓄積していくという状況でした。

この時代背景がマルクスの思想に大きな影響を与えたと考えられます。

マルクスの主な思想

マルクスの写真

カール・マルクス(1818 - 1883)

マルクスの主な思想を解説します。

疎外

「疎外(そがい)」とは、「仲間外れ」という意味です。

マルクスは、労働者が自分が生産した商品から疎外されていると主張しました。

たとえば農家であれば、自分の手で野菜を育て、自分で食べることができます。
そうすることで、自身の労働の成果を実感することができます。

農家は労働の成果を実感できる

しかし一方で、たとえば高級時計の工場で働く労働者はどうでしょうか。

彼らは給料が安いため、自分が作っている時計を一生所有することができません。

このように、一部の労働者は、自分の手で生み出した製品を所有することなく人生を終えることとなり、対照的に資本家は、労働することなく製品を手にすることができます。

 

労働者が労働の喜びを奪われ、生活の苦痛だけが残され、世の中から切り離されてしまったこの状況を、マルクスは「労働の疎外」と表現しました。

下部構造と上部構造

マルクスは、社会を構成する要素を「下部構造」と「上部構造」に分類します。

下部構造

下部構造とは、社会の物質的な側面のことです。

具体的には、生産手段(農地、工場など、何を使って生産するか)と生産関係(労働者と資本家の関係、物の所有構造、配分方式など、労働の成果が誰のものになっているか)を指します。

上部構造

上部構造とは、社会の意識的な側面のことです。

具体的には、法律、政治、文化、宗教などの、人々の考え方や社会のルールを指します。

マルクスによれば、上部構造は下部構造を反映します。

つまり、上部構造である法律や政治を変えたければ、下部構造である生産手段か生産関係を変えなければならないということになります。

この考え方が、共産主義の「革命」理論に繋がっていきます。

史的唯物論

「史的唯物論」とは、社会が異なる階級間の闘争によって下部構造が変化し、それによって上部構造が変化することで、人類の歴史が進行するという考え方です。

物質的な側面である下部構造が起点となって歴史を動かす、という意味で「唯物(物だけ)」という言葉がついています。

マルクスによれば、人類の歴史は階級間の闘争の歴史であり、労働力を持つが生産手段を持たない人々生産手段を持つが労働力を持たない人々の間の経済的な対立によって推進されてきたと言います。

 

また、マルクスは、歴史が一定の方向に進行すると考えました。

具体的には、原始的な共同体社会(平等)→奴隷社会(市民vs奴隷)→封建社会(貴族vs庶民)→資本主義社会(資本家vs労働者)→共産主義社会(平等)へと進行するという形です。

労働価値説

「労働価値説」とは、モノの価値は、それを作るために費やした労働によって決められるという考え方です。

例えば、もし1時間の労働で時計を1個作ることができるなら、その時計の価値は1時間分の労働と同じ価値ということになります。

しかし実際にはモノの値段は市場における需要と供給のバランスによって決定されるので、市場から「疎外」されている労働者の賃金には反映されないのです。

他の思想との関係

マルクスの思想は、ヘーゲルの弁証法から影響を受けています。

弁証法では、テーゼ(命題)とそれに対するアンチテーゼ(反対命題)が反応することで、新たな命題が生まれるという考え方です。

また、マルクスは後世の思想家にも大きな影響を与え、その一部は「マルクス主義」として発展しました。

特に、経済的な要素が社会や歴史を動かすという視点は、その後の共産主義革命に絶大な影響を与え、ソ連という巨大国家を生み出すまでに至りました。

実践!マルクスの思想を現代社会で生かす方法

マルクスの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。

現代の「疎外」を考える

マルクスは、劣悪な環境で働く工場労働者が疎外されていると主張しました。

現代の日本では、保険制度や生活保護制度が整備されているため、そもそもこの設定自体があまり身近に思えないかもしれません。

しかし、私たちの身の回りでも色々な「疎外」を見つけることができます。

例えば、私たちが利用している動画投稿サイトでは、個人個人が視聴した動画に応じておすすめ動画が表示されます。

これは見方を変えれば、私たちが「何を好むか」という情報を、動画サイトの運営会社に無料で提供している、と言うこともできます。

もし、それらのデータが新たな富を生んでいる場合、その利益はデータ提供者である私たちに及んでいるのでしょうか?

現代では、データはまぎれもなく財産です。

この財産をどのように使うか(提供するか)を考えるうえで、マルクスの理論は非常に参考になると思います。

※もちろん私たちは、データを提供することによって、「無料で動画を見られる」という、ものすごいメリットを享受しています。

マルクスのおすすめ入門書

 

(おまけ)マルクスの面白エピソード

マルクスは、貴族出身の妻ジェニーをとても大切にしていたようです。

マルクスは家計管理に疎く、借金に苦しむことも多かったのですが、ジェニーの洋服には惜しみなくお金を使っていたそうです。

愛妻家の側面も持っていたのですね。

まとめ

この記事では、「疎外」「史的唯物論」といったマルクスの思想を解説しました。

共産主義の思想は現代日本ではあまり流行っていませんが、その基礎となったマルクスの思想には、ひとりの社会人としてとても参考になると思います。