ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(1770 - 1831)は、19世紀初頭に活躍したドイツの哲学者です。
このページでは、ヘーゲルの思想を分かりやすく解説します。
また、ヘーゲルの思想を、現代に生きる私たちの人生に生かす方法を紹介します。
- ヘーゲルの主な思想
- ヘーゲルの思想を現代社会で生かす方法
- ヘーゲルのおすすめ入門書
ヘーゲルの時代背景
ヘーゲルは1770年に、神聖ローマ帝国の領邦国家ヴュルテンベルク公国(現ドイツ)に生まれ、大学では哲学や神学などを学びました。また、ギリシャの古典や歴史といった教養も身につけていました。
当時の哲学界では、イマヌエル・カントが理性に基づく哲学を完成させ、多くの哲学者に影響を与えていました。ヘーゲルもカント哲学を学び、これを克服することを目指しました。
また、ヘーゲルが生きた時代は、フランス革命やナポレオン戦争、産業革命が起きており、まさに世界が一変するような激動の時代でした。
ヘーゲルはそのような時代を背景に、歴史と哲学を関係づける独自の理論を展開しました。
ヘーゲルの主な思想
弁証法
「弁証法」とは、相反する二つの要素が互いに関係し合い、より高い次元で統合されるという考え方です。
ヘーゲルは弁証法を「テーゼ(主張)」、「アンチテーゼ(反論)」、「ジンテーゼ(統合)」という概念を用いて説明します。
例えば、私が「早起きした方が良い」と考えているとします(テーゼ)。しかし、友人は「夜更かししても良い、だってそれが自分の生活スタイルだから」と反論してきました(アンチテーゼ)。
その後、二人は議論を重ね、「ライフスタイルに合わせて、起床時間を設定することが最善だ」と結論づけます(ジンテーゼ)。
このように、ある主張に対してそれに反する主張をぶつけた結果、2つの主張を統合したより高度な結論に至る、というのが弁証法の考え方です。
絶対精神
「絶対精神」とは、すべての存在や現象、歴史などが弁証法運動を繰り返した先にある、最終的な存在を指します。
ヘーゲルは、この世界の全てのもの(人、物、考え方、歴史など)は、絶対精神に向かって弁証法運動を無限に繰り返していると主張しました。
つまり、全ての存在はテーゼやアンチテーゼとなり、弁証法によって生まれたジンテーゼがさらに新しいテーゼやアンチテーゼとなり、、、というように弁証法を繰り返し、最終的に行き着くゴールが「絶対精神」であるということです。
ヘーゲルによれば、私たち一人ひとりが歴史を通じて何かを学び、経験し、成長することが、人類にとってのテーゼやアンチテーゼとなり、それらが統合していくことで、人類は全体として少しずつ進歩しています。
これは言い換えれば、世界はどんどん良い方向に向かって変化し続けているということになります。
そのため、ヘーゲルの哲学は歴史の進行をポジティブに捉える考え方と言えます。
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他の思想との関係
ヘーゲルは、カントの認識論に影響を受けています。
カントは人間が認識できない世界を「物自体」と呼びました。そして、人間は物自体の世界については理性では認識できないのだと主張しました。この考え方は、哲学的には主体(=自分)と客体(=世界)の区別という意味を持っています。
ヘーゲルの思想は、主体と客体が弁証法運動によって統合されるというものであり、この意味でカントの認識論の限界を克服しようと試みたと言えます。
また、ヘーゲルの思想は後の哲学者たちにも大きな影響を与えています。
特に、マルクス主義で有名なカール・マルクスは、ヘーゲルの弁証法を社会や経済に適用することで、史的唯物論を展開しました。
マルクス主義はその後、哲学界のみならず社会の幅広い領域に大きな影響を与えました。
ヘーゲルの思想を現代社会で生かす方法
ヘーゲルの思想を現代社会で生かす方法を紹介します。
人生のビジョンを持つ
ヘーゲルの思想の一番の魅力は、その広大でポジティブな世界観にあると言えます。
ヘーゲルの理論は、個別の論点を緻密につぶしていくというよりは、「弁証法」や「絶対精神」という、様々なことを説明できるような大きな世界観を設定し、それに基づいて各論を論じるという手法です。
これを個人の人生に置き換えれば、人生で絶対に成し遂げたいことをビジョンとして設定し、そのビジョンを達成するために、日々の細かい選択肢を決定していく、という生き方がありえるかもしれません。
自分の主張をぶつけてみる
ヘーゲルの弁証法では、ある主張に対して反論をぶつけることで、両者を統合したより高次元の結論が導かれるとされます。
日常生活において、相手の主張に一定の説得力がある場合でも、自分が異なる意見を持っていたら、積極的にぶつけてみてはいかがでしょうか。もしかすると当初の主張の弱点を補完するような、より良い結論が生まれるかもしれません。
ヘーゲルのおすすめ入門書
ヘーゲルの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。
【おまけ】ヘーゲルの面白エピソード
故郷が占領されても...
ヘーゲルの主著『精神現象学』が完成した年は、偶然にもナポレオンがヘーゲルの故郷を占領した年でした。この時ヘーゲルは、自分の故郷を占領されたにもかかわらず、ナポレオンを「世界の歴史を前進させた」として高く評価していたと言われています。
まとめ
この記事では、弁証法や絶対精神といったヘーゲルの思想を解説しました。
ヘーゲルの思想は、弁証法をベースとして世界の歴史を理論づける、という壮大な哲学です。この時代のドイツの哲学はとても難解ですが、私たちの人生に大きな示唆を与えてくれると思います。