わかりやすく解説!サルトルの思想

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ジャン=ポール・シャルル・エマール・サルトル(1905 - 1980)は、実存主義の哲学者です。このページでは、サルトルの思想をわかりやすく解説します。また、サルトルの思想を、現代に生きる私たちの人生に生かす方法を紹介します。

  • サルトルの主な思想
  • サルトルの思想を現代社会で生かす方法
  • サルトルのおすすめ入門書

サルトルの生涯と時代背景

サルトルは幼少期に父を亡くし、母と祖父に育てられました。この祖父が彼に哲学への興味を抱かせるきっかけとなりました。その後、1930年代から40年代にかけて、サルトルはパリで活動しました。この時期は、第二次世界大戦の間であり、フランスがナチスに占領された時期でもありました。

サルトルはこの社会的な混乱の中で、人間の自由について深く考え、人々に自由と抵抗の意志を呼び起こしました。

サルトルの主な思想

サルトルの主な思想を紹介します。

実存は本質に先立つ

一般的に、この世に「存在」するものには、その「本質」と呼ばれる特性があります。例えば、世の中にはたくさんのイスが「存在」していますが、全てのイスには「座るためのもの」という共通の特性があり、これを「本質」と呼びます。これから新しいイスが作られる時、そのイスには、「存在」するより前に、「座るもの」という「本質」が与えられています。つまり、イスを作ってから「何に使おうか」と考えるのではなく、作る前から「これから作るイスは座るためのもの」ということが決まっているのです。このように、世の中に「存在」するものには、原則としてあらかじめ「本質」が決まっています。

しかし、人間については例外で、本質より先にまず存在があり、その後で本質が形成されるとサルトルは主張します。言い換えると、私たちは生まれた時点では「こう生きるべき」という本質を持っておらず、自分の意志や選択に基づいてアイデンティティを作ることができる、ということです。サルトルはこのことを、「実存は本質に先立つ」と表現しました。

自由と責任 

サルトルによれば、私たちは、他人によって決められた役割や社会の期待に縛られることなく、自由に生きることができます。しかし一方で、この自由には責任も伴います。私たちは確かに自由ですが、自由に選択したからこそ、行動によって生じた結果に対しても責任を負う必要があるのです。

少し分かりづらいので、具体例で説明します。

例えばあなたが上司から言われて、お客さんに商品を納品したとします。しかし、その上司は納期を間違って指示していたため、お客さんに迷惑をかけてしまいました。この場合、主に責任を負うのは上司であり、(悪い結果が起きているにも関わらず、)あなたはほとんど悪くないということになります。しかし、納品が上司の指示ではなく、自分で納期を設定していた場合はどうでしょうか。この場合は、お客さんが迷惑を被ったという結果には、あなたが全面的に責任を負うことになります。

このように、なんでも自由に決められるということは、一見素晴らしいことに見えますが、実際には自由に決めたからこそ、負わなければならない責任が発生することになります。サルトルは、人間がただ自由であるだけでなく、その自由に伴って生じる責任も背負っていることを指摘しました。

他の思想との関係

サルトルの実存主義思想は、それ以前の思想、特にカントやヘーゲルなどの哲学者の影響を受けています。これらの哲学者は、人間の自由意志や理性について重要な論文を残しており、サルトルの自由と責任の概念の形成に影響を与えました。

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また、サルトルの思想は、その後のフランスの現象学や構造主義、ポストモダニズムなどの思想にも大きな影響を与えました。特に、フーコーやドゥルーズなどの思想家はサルトルの影響を受けて自由と権力、アイデンティティと他者の関係についての新たな視点を提供しました。

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サルトルの思想を現代社会で生かす方法

スケジュールを問い直す

スケジュールがいっぱいな時は、「なぜその予定に参加しなければならないのか」と問い直してみましょう。いくつかのスケジュールが、他人の都合を実現するために設定されていたことに気付くことができるでしょう。そんな時はサルトルの姿勢を見習って、「やるべきこと」ではなく「やりたいこと」を中心にスケジュールを組みなおしてみるのも良いかもしれません。

自由を絶対視しない

サルトルは自由を重視しましたが、現代で生きていくためには、何でもかんでも自由に振る舞うのはほぼ不可能です。そんな時、もっと多くの自由を求めて努力するという選択肢もあります。しかし、もしその自由がどんなに頑張っても手に入らないものであれば、敢えてその自由の裏側にある責任を意識して、「そういう自由が無い幸せもあるか」と割り切ることもできます。

サルトルのおすすめ入門書

サルトルの思想を学ぶためのおすすめ入門書を紹介します。

 

 

【おまけ】サルトルの面白エピソード

ノーベル賞を辞退

サルトルは1964年にノーベル文学賞を辞退しています。その理由は、サルトルが自分の作品や思想が賞によって定義されることを拒否したためと言われています。彼は外部の評価に左右されず、自分を自分の行動と選択によって定義する、という彼の信念が示されています。彼は同様の理由で、他の名誉ある賞もことごとく辞退しています。自分の思想に忠実に生きる人だったのですね。

当時としては珍しい事実婚

サルトルは、恋人であったシモーヌ・ド・ボーヴォワールに永遠の愛を誓いながらも、結婚はせずに、お互い別の恋人を作ることを許し合う関係を提案しました。そしてサルトルは実際に他の女性とも関係を持ち、その都度ボーヴォワールに報告していました。当時のフランスでは事実婚は非常に珍しいことでしたが、自由を重視するサルトルの意志を表しているといえます。ただ、恋人のボーヴォワールとしては複雑な心境だったのではないかと思います。。

まとめ

いかがでしたでしょうか。サルトルは人間の自由を重視する思想家ですが、彼の生き方自体がとても自由です。自由に責任がついて回ることを理解していれば、逆に自分がどこまで自由に生きたいかということも見えてくるのではないでしょうか。