実存主義は、19世紀から20世紀にかけてヨーロッパで発展した哲学です。
この記事では、実存主義についてわかりやすく解説します。
また、実存主義の代表的な哲学者とその思想を紹介します。
- 実存主義とはどのような思想か
- 実存主義の代表的な哲学者とその思想
- 実存主義のおすすめ入門書
実存主義とは
実存主義とは、個人の存在、自由、選択の重要性に焦点を当てる哲学です。
19世紀から20世紀にかけて主にヨーロッパで発展し、日本の思想にも大きな影響を与えました。
実存主義の特徴
実存と本質
「実存」とは個人の人生、「本質」とは人間が生まれながらに持っている特定の目的や本質を言います。
従来の哲学では、まず「人間とは何か」「人間は何をすべきか」という本質的な問いがあり、そのうえで個人の存在がありました。
つまり、従来の哲学では「実存」よりも「本質」が重視されてきました。
しかし、実存主義は個人の人生やアイデンティティが外部要因によって決定されるのではなく、個々の人間の行動や選択によって形成されるのだと主張します。
つまり実存主義は、「本質」よりも「実存」を重視する哲学であると言えます。
自由と選択
実存主義では、人間は自由な存在であり、自らの選択によって自分の存在(=人生)を切り開くことができると考えます。
言い換えれば、自由な選択が人生を定義するということです。
自由と責任
実存主義では、自由には責任が伴うと考えます。
個人が人生を自由に選択できるということは、その選択の結果に対しても個人が責任を負うことになります。
不条理との対峙
実存主義では、人生の不条理や無意味さを認めます。
そのうえで、不条理な人生と向き合うことの重要性を強調します。
実存主義の代表的な哲学者
セーレン・キルケゴール
キルケゴールは、誰から見ても正しい客観的な事実ではなく、自分にとっての主体的真理を追究することが重要であると主張し、実存主義の先駆けとなりました。
キルケゴールは、個人が主体性を得るためには、「美学的実存」「倫理的実存」「宗教的実存」の三段階を経る必要があると主張しました。
フリードリヒ・ニーチェ
ニーチェは、自分の不満や欠点を直視することなく、他者や外部の状況を責める心情を「ルサンチマン」と呼びました。
そして、ルサンチマンを克服し、自分の価値を自分で創造していくことによって、真の自由を獲得できるのだと主張しました。
マルティン・ハイデガー
ハイデガーは、人間は他の動物や物体とは異なり、決断によって自分の存在の在り方を自由に選択できる唯一の存在(=現存在)であると主張しました。
ハイデガーによれば、人間はこの世界に何の目的もない状態で生まれ、ただ「死」に向かって進む存在にすぎません。
しかし、「死」を直視した人間は、自分の人生を選択し、決断していくことができるのだとハイデガーは主張しました。
ジャン=ポール・サルトル
サルトルは、「実存は本質に先立つ」という名言を残しました。
「実存」とは、私たちが「こう生きたい」と思う生き方のことで、「本質」とは「人はこう生きるべき」という一般的な考え方です。
サルトルによれば、私たちは生まれた時点で「こう生きるべき」という本質を持っているのではなく、自分の意志や選択に基づいてアイデンティティを作ることができます。
アルベール・カミュ
カミュは人生の「不条理」を強調しました。
カミュによれば、人間は意味や秩序を求める存在ですが、世界には意味などありません。
そしてこの人間と世界の不調和こそが人生の不条理の正体です。
しかし、カミュによれば、人間は人生の無意味さを受け入れることで自由になり、逆に自分の人生に意味を見出すことができるようになります。
代表作『異邦人』では、社会のルールに従わず感情の乏しい主人公が、死刑執行前に初めて幸福を実感する姿が描かれています。
実存主義から学べること
人生の意味の追求
実存主義の考え方によれば、人生には本来意味はありません。
つまり、どのように生きるべきかという答えは用意されていないのです。
したがって、自分がどう生きるべきかは、自分がどう生きたいかによる、ということになります。
これまで何となく信じていた常識を一旦忘れて、本当に自分がやりたいことを追求してみてはいかがでしょうか。
自由のマイナス面を自覚する
「自由」と聞くと、「解放的」とか「他者から邪魔されない」といったプラスの印象を受けます。
しかし、実存主義の考え方によれば、人間は自由だからこそ、その行動の結果には責任が伴います。
この自由のマイナス面を自覚することで、逆に不自由な現状のありがたみを知ることができるかもしれません。
例えば、フリーランスの働き方は、就業時間や場所を自由に決められるため、会社員にとっては魅力的に見えます。
一方で、フリーランスは結果を出せなければすぐに経済的に困窮してしまいます。
これは自由の隠れたマイナス面であると言えるでしょう。
実存主義を学びたい方におすすめの入門書
他の思想との関係
実存主義と対立する思想として、構造主義があります。
構造主義とは、私たちの思考や行動は、所属している社会や文化によって決められているという考え方です。
実存主義が個人としての生き方を重視するのと対照的ですね。
まとめ
この記事では、実存主義についてわかりやすく解説しました。
実存主義は人間がどうあるべきかという「本質」よりも、個人がどうありたいかという「実存」を重視する哲学です。
社会の常識が目まぐるしく変化し続ける現代において、自分の立ち位置を見失わないためにも、学んでおいて損はない哲学だと思います。